最近話題の、「学校検診で上半身裸にすることが問題視された件」について少し考えてみたいと思います。
まず、第一に、「学校検診の目的が何か?」を整理しましょう。
1. 循環器、呼吸器の疾患のスクリーニング
2. 側彎症や漏斗胸など骨格異常のスクリーニング
3. 皮膚症状のスクリーニング
3. 虐待の有無を確認
といったところでしょうか。
多くの場合、1に関しての専門性が高く問われるため、内科のベテラン医師が校医として担当します。
ちなみに、私の祖父も伯父も、父も、地元の開業医でしたので長く校医を務めていましたが、かなりの重労働だと聞いています。
騒ぐ子供の声のなか、集中して心音と呼吸音を聴き、重篤な疾患を見極めるわけですから。
そして、1日で数百人の診察をしても、その割に報酬は低く、まさにボランティア活動のようなものです。
ですから、私は小学生のころから「校医の先生には感謝しなさい」「先生の診察がスムーズになるように協力しなさい」と教えられましたし、娘たちにも同じように伝えています。
さて、私は父親が循環器内科医でしたので、子供のころから本物の聴診器でお医者さんごっこをしましたし、心臓模型をブロックにして遊んでいました。
自分の心音、呼吸音を聴くと分かるのですが、布のガサガサする音もビックリするほど増幅され、耳につきます。
つまり、着衣のまま、聴診器で心音が聞こえるかどうかと問われれば、「聞こえるが診断の質は下がる」のです。
私だったら、せっかくの診察のチャンスに、100点の診察をしてもらいたいなと思います。
それでも、〝恥ずかしい年ごろの子を裸にするのが虐待だ”とお考えなら、どうぞ着衣のまま、もしくは衣類の隙間から聴診器を入れてもらった状態で検診を受ければよいと思います。
ただし、何らかの疾患を見逃しても医師に責任はありません。
裸にして初めてわかる、微かな側彎症状や皮膚症状、見えないところに付けられた虐待の痕跡などを見逃すリスクの方が、ある意味虐待なのでは・・・と思ってしまいます。
プロにプロの仕事を全うさせるなら、プロが一番診やすい状態で診させてください。
私は皮膚科専門医ですが、化粧をした状態で皮疹の診察はできません。
見えないものは見えないし、聞けない音は聞けないからです。
もちろん、順番が来るまでずっと裸でいさせる必要はありませんので、袖を抜いてシャツを羽織った状態で待たせる、準備室で脱がせ、看護師同室の上で診察させる、などの当たり前の気遣いは必要でしょう。
でも、〝男性の医師に診察された”、〝上半身裸で聴診された”は全く問題ないと思います。
医師は、男性でも女性でも関係なく老若男女を診察します。
プロですから。
大切なのは、診察の目的と必要性を子供に説明することだと思うのです。
たとえば、皮膚科保険診療において、子どもたちにに痛みを伴う処置をする場合は、親御さんと本人の両方の目を見て説明します。
2~3歳の子でも、ちゃんと理解すれば暴れずに耐えられるものです。
「そんな悪い子は病院で先生にチックンされるよ」
的な荒い説明をされた子にとっては、医療行為は暴力的かもしれません。
でも、ハイレベルな医療を受けられる日本がいかに豊かで幸せなのかを、年齢に合わせた言葉で説明された子にとっては、受ける印象が全く違います。
私は、「暴れるなら治療はしないのでお帰り下さい」とはっきり申し上げてきました。
1日治療が遅れれば、とびひは悪化し、水いぼはさらに増え、ウイルス性イボは大きくなるので、親御さんは麻酔のテープを貼って待つ40分の間に、子供たちにバッチリ説明してくださいます。
すると、治療はスムーズに行われ、取るべき水いぼは全て除去でき、十分な時間ウイルス性イボに液体窒素を処置できます。
同様に、学校検診で何をスクリーニングするのか、どんな音を聞いているのか、それを無料で、医師が学校に来てくれて受けられるのはどれほどありがたいことなのかを、親御さんの言葉で説明していただければ、子どもたちの受け止め方も変わるのではないでしょうか?
子どもの理解力は侮れないもの。幼くても魂を込めて伝えればきちんと分かるものだと思います。
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