2024年3月19日放送のTBS『マツコの知らない世界』にて、 サリチル酸ワセリンを保湿剤として使うという内容が報道されましたが、皮膚科専門医として大きく3つの理由で不適切と考え、注意喚起注意させていただきます。


 yahooニュースでも紹介 



「サリチル酸ワセリンを保湿剤として使うことをおすすめする」

「サリチル酸ワセリンとステロイドを混合して処方する」

「お医者さんに頼めばそういう用途で処方してもらえる」

という内容は、視聴者の誤解を招く可能性があると思います。


まず、第一にワセリンは保湿効果ほぼゼロ!!

乾燥肌の治療で、ワセリンやプロペト(精製したワセリン)を保湿目的に処方するのは時代遅れですガーン


いくつもの臨床試験がありますが、水分保持力を有するヒューメクタント(セラミド、アミノ酸、ヒアルロン酸、グリセリン、多糖類など)を含まない油やワセリンなどは保湿剤とはよびません

エモリエントと呼び皮膚に柔軟性を与えるものです。

食用オリーブ油を塗っても無意味&酸化油で肌老化が進みます。

びっくりしたって?

この辺りはまた別の機会にご紹介しますねウインク

これに関しては、10数年間メディアで情報提供してきましたが、いまだに、ベトベトする方が潤うと勘違いしている方が多いのも事実です。


ただし、ワセリンやプロペトをあえて皮膚科医が処方する場合もあります電球

湿疹や皮膚炎が重症でぐじゅぐじゅの皮膚には、乳液やクリームは刺激性があるので、上皮化まで浸透しないワセリンを一時的保護材として利用する時などです。もちろん、改善すればヘパリン類似物質などの一般的な保湿剤に処方変更します。

ベトベトするものは患者さんのストレスになりますし、苦しい割には効果が無いのでね。


第二にサリチル酸は皮膚を溶かすので乾燥肌にはNG!!

サリチル酸には皮膚の角質を溶かして柔らかくする作用があるため、ワセリンに混ぜたサリチル酸ワセリンをガチガチに厚くなった足の裏などの硬い皮膚に塗って柔らかくしたり、高濃度の製剤(スピール膏)をいぼや魚の目に貼り付けて真っ白に腐食させ崩して削るといった使用法もあります。

私も過去に何回か処方しました。


ワセリンとサリチル酸ワセリンはこのように、作用も目的も全く異なります注意


10数年前から、ケミカルピーリング治療にサリチル酸マクロゴールを使う先生もいらっしゃいますが、使用法が煩雑であまり広がりませんでした。

ピーリングに使うような酸性の成分ですので、乾燥肌、敏感肌にサリチル酸ワセリンの外用は危険ですアセアセ

ちなみに、

スピール膏:濃度50%

サリチル酸ワセリン:濃度5~10%

サリチル酸マクロゴール:濃度30%

番組で放映されたように全身の保湿剤として使うには不適切と言わざるを得ません。


第三に、ステロイドと混合して使うのも危険!!

ステロイド外用薬は、湿疹や様々な皮膚炎を治療する目的で短期間使用するには非常に有効です。


皮膚科専門医の腕見せ所は、ステロイドを切れ味よく処方し、いかに速やかに皮膚の炎症を沈静化させるのかなのです。


ところが、乾燥肌で皮膚バリアが崩れた皮膚に角層融解作用のあるサリチル酸ワセリンとステロイドを混ぜて全身に塗れば、ステロイドの副作用が顕在化しやすくなる可能性があります。

また、もしも全身に大量に長い期間塗ったりすると、皮膚から吸収されたサリチル酸が体内に入り「サリチル酸を服用したときのような」全身の副作用が起こらないとも限りません。

皮膚科専門医にとして注意喚起させていただきます。

出演なさった医師は痒みのメカニズム研究に関しては皮膚科学会の権威でいらっしゃるので間違いなく素晴らしい内容だったと思います。

でもね、一般の視聴者は、そんな事は覚えていてはくれないんです。

その事を慶田は10数年で学びました。

結局テレビでは、

「スーパーやドラッグストアに行って何を買えばいいか❓」

「何を食べればいいか❓」

「何を塗ればいいか❓」

が一番印象に残ってしまうし、シェアされてしまうのです。

監修した先生は、最近ご研究が主たる活動で、実臨床はあまりなさっていないのかもしれません。

80歳オーバーのご年齢ですし。


『テレビのコンプライアンスを遵守しつつ、分かりやすく誤解のないシンプルな言葉遣いで情報を伝える』という特殊能力がテレビ出演では欠かせません。

ですから、私の恩師などほとんどの先生は

「あ〰️めんどくさい。出ないよ僕は」

とおっしゃいます。

なお、テレビ局側は、専門医に教えを乞っているだけなので、このような事実を把握出来なかったとしても仕方ないのかなと思います。

それくらい、医師がテレビに出る際には覚悟がいるのです。


私もこれまで数えきれないほどテレビ出演いたしました。放送時間がどれほど短時間であっても、番組監修から関わって、事前のリサーチと打ち合わせに膨大な時間を割きます。

放送させてしまったら取り返しがつきませんし、昨今のテレビの高率視聴者層は高齢者なので、後程ネットで正しい情報を流しても届かないからです。

そのため、時間が無いときはお断りしております。


生放送でなければ、うっかり口を滑らせた場合、カットをお願いしたり、コメント撮り直しもできますが、生放送の緊張感は別格です。

撮り直しのできないタレントさんとの掛け合いがある番組も、

「慣れてない先生には頼めないんですよ」

とプロデューサーさんは口を揃えておっしゃいます。


本来、番組や他の医師を批判したくないので、ちょっとした事はスルーしていますが、今回の内容は危険ですのでブログに書かせて頂きました。

 

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