唇は、男女ともに魅力度に大きく影響するパーツ
皮膚科医は、口唇炎、口角炎、接触性皮膚炎などの湿疹・皮膚炎、口唇ヘルペスやとびひ等の感染症などの治療を通して、日々診察する機会が多い部位です
ところが、こと、唇の正常組織像を探してみると、病理学の正書にはほとんど記載がなく、口唇関連の論文も非常に少ないのです
唇の解剖学的特徴から考察する正しいリップケアを述べたいと思ったのですが、調べるほどに欲しい情報がない。。。
老化すると唇が痩せることは自明なのですが、老化した唇と若年時の唇の比較に関する研究もない
さてさて困ったと思っておりましたら、こんなにいい論文を見つけました五味貴優さんの学位論文「赤唇部の加齢変化に関する組織学的研究」です
42ページの超大作!!知りたかった情報がかなり網羅されており、久々に感動しましたのでご紹介いたしますね
まずは、口唇関連の名称を整理しましょう!!
いわゆる皆が唇ってイメージする部分、口紅を塗る部分は『赤唇』、赤唇の縁を『唇紅縁』と呼びます
『鼻唇溝』はほうれい線のことで、顎の凹みを横に走る線を『頤唇溝(オトガイシンコウ)』と呼びます。
その周囲の肌色部分、範囲としては鼻唇溝、鼻、頤唇溝で囲まれるエリアを『白唇』です。
左右の口角部分が『唇交連』
赤唇の内側は、唾液で常に濡れた『口唇粘膜』です。
名称が難しいですね~
赤唇部の組織学的特徴~粘膜移行部の特殊性
実は、唇は、普通の皮膚と粘膜の移行帯で、『粘膜移行部』と呼ばれ、組織学的構造が皮膚とも粘膜とも異なる独特な組織なんです
『白唇』は、皮膚と同じく、「角層(表皮最外層)」「表皮」「真皮」「皮下脂肪」の四層構造
『口唇粘膜』は、「粘膜重層扁平上皮」「真皮」「皮下脂肪」の三層構造
一方、『赤唇』は、「角層」「重曹扁平上皮」「真皮」の三層構造でその下には「筋肉(口輪筋)」で皮下脂肪が無いのです
え!??
この唇プルッとしたものは、脂肪ではないのね
組織学の本を色々見ましたが、確かにそうなのです
赤唇部の角層の特徴
また、赤唇部の角層には下記のような特徴があります
角層の層数は頬と同じだが、角層の厚みは頬より厚い。
皮膚よりTEWL(系表皮水分蒸散量)が高いが、角層水分量は高い。(普通はTEWLが高いと角層水分量は低い)
う~ん
角層が厚いのは、後にも述べるように、様々な刺激で過角化していることを反映しています。
バリアが弱いのでTEWLが高いのは当然ですが、相反する角層の水分量が高いというのは唾液で濡れているせいか・・・
謎の多い組織です。
赤唇が魅力度を決める!!
赤唇は、見た目で年齢を評価する際に、相対的寄与度(影響する度合い)が大きい因子であることが分かっています。
具体的には、赤唇のボリューム感や上赤唇のシワの有無が、見た目年齢に大きく影響するのです
おばあちゃんの唇は亀のように赤唇が薄くなり内側に入り込んでしまっていますよね
では、具体的に加齢によってどの様に変化してくるのでしょうか?
赤唇部の老化、その組織学的・物性・機能的特徴とは?
赤み:上下赤唇ともに加齢により低下・・・加齢により赤みが失われる
明度:上下赤唇ともに加齢により低下・・・加齢により透明感が失われる
黄味:加齢による相関なし・・・・唇に関しては加齢で黄味が増すわけではない
血流量:加齢により低下・・・・加齢により循環も悪くなる
メラニン量、メラノサイト数:加齢により増加・・・・加齢によりシミとくすみが
形態変化:上赤唇の縦幅、厚さ、面積ともに加齢により減少・・・加齢により薄く萎む
触覚機能:加齢により低下する・・・・加齢により感覚も鈍くなる
シワ:加齢と共に数、深さ、表面の粗さ全てにおいて加齢により増加する・・・・加齢によりシワが増え深くなる
弾力性:加齢と共に伸展性が増し、跳ね返り度合いが悪くなる・・・・加齢により弾力が低下し、よく伸びるようになる
コラーゲン線維:加齢と共に密度が低下、コラーゲン線維束が太く不規則に膨れた形態に変化、I型プロコラーゲンの減少
エラスチン線維:光老化の程度によりソーラーエラストーシス(異常凝集)あり
ヒアルロン酸:加齢により減少
➡しかしながら真皮の厚さには加齢変化を認めない。
口輪筋構成重鎖の変化
➡口輪筋の先端形状が赤唇部の見た目の変化に大きく影響している。そもそも、口輪筋は赤唇部まで入り込んでいる。若年者では筋線維が太く密で、全体的に丸い塊状を呈しているが、高齢者では同エリアの口輪筋線維が萎縮し、形状も直線状になり、これが赤唇の形態変化に最も影響している。
白雪姫のようなぷっくりと赤い唇は若さの象徴メラニンが少なく、透明感があるからシアーなグロスが生えるのです
悲しいことに、加齢により、形も色も弾力も水分量も変化します。
ボリュームが減って乾燥し、シワが増え、くすんで弾力が減ってくるのです
それに抗うには、脆弱なバリアを持つ唇の保湿、紫外線(光)対策を怠らない事
乾燥や食べ物の刺激で軽微な炎症を繰り返し、老化が加速しやすいので、リップクリームや美容液をまめに塗りましょう
また、食事の後はきちんと唇も洗うことが大切ですよ
誰にもばれずに、自然で上品な仕上がりが慶田の真骨頂
ぜひご相談くださいね
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