昨夜は残業して疲れ果てて22:00に帰宅。

今朝は診療前に9:30出勤。

遅くなった理由は、他院でのヒアルロン酸注入後の血流障害が生じた患者さんの治療をしたためです。

注入後瞬時に症状(痛み、痒み、くしゃみ、鼻づまり)が出現。1時間で網状紫斑が、注入したほうれい線~頬~額~鼻全体の広範囲に拡大。ほうれい線エリアは黒色化。

 

施術介助した看護師は注入直後に白色変化に気づき、院内で待機する指示を出したそうです。直ぐに溶解が必要と気づいた(これまた医師ではなく)看護師の機転で、当院に依頼が来ました。

 

状況から緊急性が高いと判断しましたので、患者さんのために時間外で特別に対応しました。

 

受診後、カルテ作成は後回しに、アレルギーチェックと写真撮影だけ行い、塞栓エリアを中心に超広範囲にヒアルロニダーゼを大量に局注し、溶解。同時にプロスタグランディン製剤を点滴静注しました。

30分で黒色変化がやや改善。点滴終了後に追加で溶解注射し、ピークは脱したと判断して帰宅頂きました。

 

事故が起きた事以上に大きな問題は、その患者さんが施術を受けたクリニックが、ヒアルロン酸溶解酵素を用意していなかったことです。

ヒアルロニダーゼやヒレネックスは一定期間過ぎると廃棄処分になるのでもったいないと思う先生がいるようですが、絶対に必要な製剤です。

 

ヒアルロン酸注入をするなら、先にヒアルロン酸溶解酵素を用意してから始めるのが医師の誠意です。

 

血流障害が発生した場合、ゴールデンタイム(動脈塞栓は30分以内、静脈の血流障害なら半日~3日間以内)に溶解すれば後遺障害なく回復しますが、製剤が無く、治療が遅れると皮膚壊死になります。

 

幸い、今回の患者さんは事故の3時間半後に受診され、ベストの対処をギリギリで出来たと思いますが、本当に危なかったです。軟骨形成での隆鼻術の既往があり、特に血流障害から鼻の壊死リスクが高い方でした。

 

今朝、再診頂き、最悪の事態は回避出来たと確認しました。しばらく相当痛みますし、違和感と網状紫斑は3ヶ月程度続くと思いますが、いずれ消失します。

 

事故は非常に少ない確率ですが、生じます。でも、出来る限り事故率を下げる細心の注意と、万が一を想定に入れて万全の対処をするかどうか、これが運命の別れ道だと思うのです。

 

当院では、全ての医師、スタッフがヒアルロン酸注入後の血流障害に関して深く学んでおり、定期的に勉強会を行っています。緊急時に必要な薬剤はまとめて保管し、毎月看護師長と副師長が内容をチェックし、緊急時のマニュアルも毎年更新しています。

 

ですから、窓口でお問い合わせ頂いた時点で、

「先生急患です」

とスタッフが直ぐに上申し、必要な情報を全て聞き出してくれました。

 

私は夜の予定をキャンセルしましたが、お美しいお嬢さんの顔に修復出来ない障害が残らずに済み、何より満足です。

 

そして、改めて、啓発が必要だと感じ、ヒアルロン酸注入指導医を務める友人医師と深夜に情報共有しました。彼女と私はこれまでにも、何回もこの話題を語り合っています。

 

共通の意見として、

「製薬会社はヒアルロン酸溶解酵素を持たず、血流のの治療知識が無い医師には、ヒアルロン酸製剤を販売するべきでは無い」

ということ。

たとえ、法律的に縛れなくても、倫理的な問題です。

 

そして、メディアを通じて、ヒアルロン酸注入を受ける前に、治療を受ける病院の体制、医師の経験値、専門医かどうか、製剤の知識、万が一の事態での対処法などが充分かどうか、患者さん本人が情報収集する必要性を啓発しなければならないと強く感じました。

 

安すぎる料金設定は危険だとはよくお話していますが、今回事故が起きたクリニックは当院よりずっとずっと高い金額設定でした。友人医師はそこに相当憤慨していました。値段が高いから安心とも言えないようです。

 

さらに、皮膚科専門医でも形成外科専門医でもありませんでした。

 

皆様はヒアルロン酸注入治療の予約電話をするときに、これだけは確認してください。

 

「そちらのクリニックには、ヒアルロン酸溶解酵素が置いてありますか?先生に血流障害の治療経験や知識はありますか?」

 

スラスラと答えられない病院は避けましょう。

 

ヒアルロン酸注入は素晴らしい治療です。

当院は年間に1000件のヒアルロン酸注入施術を行っていますが、本当にそう思います。

照射治療による引き締めやリフトアップ、糸による引き上げ治療だけでは、骨と脂肪の委縮(ボリュームロス)を改善させる事は出来ません。

ただし、経験豊富な医師が準備万端なクリニックで施術するに限るという限定条件が付きます。

ちなみに、当院は24時間音が出る緊急電話を私が持ち歩いています。鳴った事はありませんが、患者さまと私たち、お互いの安心のためです。

海外出張などでは、他の勤務医師に預け、患者さまの情報を申し送ってから旅立ちます。

 

病院選びは慎重にと、心から願っています。

 

ヒアルロン酸注入治療そのものが貶められないためにも、ヒアルロン酸注入技術を継承する活動も続けて参ります。
 

 

ちょっと怖いお話でしたので、猫鍋の癒し写真を😺

 

 

そして、春を感じる道明寺桜餅。私は断然つぶあん派です。

 

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