人生初の西尾維新作品読了。『化物語』とかで名前は知ってはいたけど著書は読んだことがなかった。
ざっくりとしたあらすじは、故郷を自殺の名所として復興させるために小説を書いてくれと依頼された主人公で推理作家の「私」。承諾したが密かに計画を阻止することを決意し、行動する。という感じ。
少しネタバレ入ります!!
まず、登場人物の名前がおもろい。主人公の作家の名前は言祝寿長(ことほぎことなが)という字面だけ見ればめちゃくちゃ縁起の良い名前なのだが、その実態はうだつの上がらない推理作家、しかも自殺小説がお得意という名前とは裏腹の人物である。奇天烈な名前だが他の登場人物も負けてない。もう登場人物紹介を見ただけでこの作品の世界に引っ張られてしまった。
魅力的な登場人物紹介に引きずられて本編に入ると、今度は主人公の語りに魅了された。例えば"私はやんわりと断りにかかる。時間の無駄は、最小限のほうがいい。無駄を滅殺するための時間だって無駄なのだから。できる限り駄を無にしなくては。"(p10より引用)のような言葉遊び的な言い回しが終始続く。そんなうまいことを言おうとしてる風の言い回しと斜に構えたものの見方が相まって、独特な語りになっていたのが斬新だった。あと主人公すぐ死にたくなるところも。ここまで語りだけで我が出まくってる語り部はそうそういないだろう。それだけに人物像は非常に掴みやすい。特にこんな人物ですっていう説明がなくても人となりがわかるだろう。
だけど、小説家としての矜持や小説の持つ力を強く信じている。その矜持や信念がこの物語を解決?に導くのだけれど、それは読んでいただくとして、カッコいいと思った所を抜粋させていただく。
"「小説家が小説を信じずに、いったい何を信じるんだ。誰が信じてくれるんだよ」ウェルテル効果があるのなら。ウェルビーイング効果もあるはずだ。『ダ・ヴィンチ』で知った新刊小説の発売日を、お正月よりも指折り数えて待ったあの日々が、若気の至りの勘違いだったわけがない。「夢物語の絵空事。それを描くのが小説だって信じている」"(p157〜158より引用)
"書かせればいいし、書いた小説を、なんとでも言えばいい。だけど、小説を書くなとだけは、誰にも言わせない。死んでも言わせない。"(p179〜180より引用)
主人公がどれだけ小説が好きで小説のもつ力を信じているか。そして小説家に対する矜持がものすごく伝わる。(これ、西尾先生の小説や小説家に対する考えを代弁してるのかな?🤔)
結末としては、主人公の思惑通りとはいかなかったけれど、登場人物全員が納得できるいい落ちだったと思う。読んでるこちらも全てが主人公の思い通りではなかったんだろうけど、これもこれで良い終わり方だなぁと思ったし、タイトル回収も良かった。めちゃくちゃ楽しかったよ…。
西尾維新先生の作品、今後も読みます。