肥満症 | イノクリ勉強部屋

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井上クリニック 副院長の辰巳です。
内視鏡を中心に消化器領域や一般内科を専門としております。

様々な病気や健康について取り上げていきますので、是非ご覧ください。

皆さんこんにちは!

井上クリニック副院長の辰巳です。

 

 

今回は肥満症についてお話ししようと思います。

 

最近体重が増えた」

お腹の周りの脂肪が気になる

など気にされている方も多いのではないでしょうか。

また脂肪や肥満は体に悪いというイメージは皆さん持っていると思いますが、実際どのような問題が起こるか知っていますか?

 

肥満は様々な病気を引き起こし、高度肥満では寿命が5~10年短くなり健康寿命はさらに短くなるという報告もあります。

肥満によるリスクをしっかり理解し、日々の生活を改善することで様々な病気を回避することができますので、最後までぜひご覧ください。

 

 

 肥満とは

まずよく耳にする肥満、肥満症、メタボリックシンドロームの違いを見てみましょう。

 

肥満とは身長に対して体重が過剰である状態です。

体格指数(BMI=体重[㎏]÷身長[m]÷身長[m])≧25のことを指します。

 

 

肥満症とは肥満に糖尿病高血圧脂質異常などの11種の合併症のいずれかを認める状態です。またBMI≧35の場合は高度肥満症となります。

 

 

メタボリックシンドロームとは内臓脂肪が過剰に蓄積されている状態です。腹囲が男性で85㎝以上、女性で90㎝以上であり、なおかつ高血圧、糖尿病、脂質異常のいずれか2つ以上当てはまっている場合をいいます。

 

 

 肥満による合併症

 睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome)

寝ている間に何回も呼吸が止まる病気です。無呼吸とは睡眠中に10秒以上呼吸が停止している状態であり、1時間に5回以上もしくは7時間の睡眠時に30回以上の無呼吸があれば睡眠時無呼吸症候群(SAS)です。

いびきが大きい方、急にいびきが止まるっていると言われた方、しっかり睡眠時間をとっているのに日中眠気が強い方はSASの可能性があります。原因としては肥満による喉への脂肪蓄積により起動が狭くなることが挙げられます。このSASは心筋梗塞、脳梗塞などの原因となり大変危険な状態です。

治療にはまずは肥満の改善ですが、経鼻的持続陽圧呼吸療法(CPAP)と言われる機械を睡眠中につける治療があります。

 

 

 脂肪肝・肝硬変

脂肪肝とは肝臓に脂肪が蓄積された状態です。肝臓に脂肪が蓄積されると肝臓に軽微な炎症を引き起こし、長期間続くと肝臓が線維化されカチカチに硬くなる肝硬変へと移行します。肝硬変は肝臓の機能が低下し、肝不全となり命にかかわります。また肝硬変は肝臓癌の原因となります。脂肪肝は可逆性の変化であり、食事や運動など適切に治療すれば元の肝臓に戻ることができます。しかし肝硬変は元には戻りません。脂肪肝のうちにしっかりと治療を行いましょう。

 

 

 大腸癌、乳癌、前立腺癌

肥満では癌の発生率が上昇ます。特に大腸癌、前立腺癌、乳癌はその関連性が特に強いと言われております。

 

 

 うつ病

近年、肥満とうつ病にも関連があることが報告されており、肥満、食生活の乱れ、運動習慣などを改善することでうつ症状が改善されるという報告もあります。

 

 

そのほかにも糖尿病高血圧、心筋梗塞、狭心症、変形性質関節症など様々な疾患が肥満によって引き起こされます。

 

 

 治療

 

  食事療法​

1日の摂取エネルギー量の算定基準である25-30kcal×目標体重 (kg) /日以下を目安とした食事量に設定します。また栄養バランス、食べ方(早食いをしない、決まった時間に食事を摂る等)、飲酒の習慣などを改善します

 

 

  運動療法

エネルギー消費量を増やすことが目標となるため有酸素運動を中心とした運動を行います。1日30分以上を週5日以上または週150分以上の運動を行います。

 

 

  薬物療法

 

 

 漢方薬 

肥満だけで保険適応となっているのは漢方薬の防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)」、「防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)」、「大柴胡湯(だいさいことう)」の3つになります。

 

防風通聖散

お腹まわりに脂肪が多い、いわゆる「脂肪太り」の方に適しています。体を温めて熱を発散し、エネルギー消費を高めて脂肪の分解や燃焼を促すことで、肥満症や便秘を改善します。

 

 

防已黄耆湯

むくみが気になるときや、水太りの肥満症に用いられる漢方薬です。たまった余分な「水」の排出を促すことで、むくみや水太りを改善すると共に、ひざのはれや痛みにも効果を発揮します。

 

 

大柴胡湯

ストレスなどの過食のための肥満症や肥満に伴う肩こりや頭痛などの症状に用いられる漢方薬です。自律神経乱れなどで胃腸が正常に働かなくなり、過食や便秘などを引き起こします。この自律神経の乱れを整え、また肥満による頭痛や肩こりなどの症状を血液の循環を調整することで改善します。

 

 

 

 マジンドール

食欲にかかわる神経に働きかけて、食欲をおさえます。また、体の消費エネルギーを促進したり、代謝をよくすることで体重を減らします。肥満症に保険適応がありますが使用は3か月までとなっております。

 

 

 SGLT2阻害剤

体内の余剰な糖を尿中に排泄する薬です。糖尿病の薬であり、肥満では保険適応がありません。

 

 

 GLP1受動態作動薬

血糖値を下げるインスリンを膵臓から分泌させる働きがある糖尿病治療薬です。中枢神経に作用し食欲を抑える効果があります。肥満では保険適応がありません。

 

 

 

 まとめ

 

 

⚫︎肥満は様々な病気を引き起こし結果として寿命の短縮するという報告もあります。

 

 

⚫︎まずは食事療法・運動療法をおこない生活習慣を改善しましょう。

 

 

⚫︎改善がなければ薬物療法による治療もあります。

 

 

⚫︎肥満が気になる方はまず受診し疾患がないか検査を行いましょう!

 

 

以上今回は肥満についてのお話でした肥満が気になる方はまず受診し疾患がないか検査を行いましょう!

今後も様々な情報を発信しいきますのでよろしくお願いいたします。