がん患者は可哀そう?
がんが深刻な病気であるのは間違いないけど、必ずしもがん=死病ではなくなっている。それなのに、今でもがん=不幸のイメージがつきまとい、がん患者さんは可哀そうな人と思われてしまう。私のまわりにもがんを隠している人が多くて、私が公表したら実は私も・・と連絡をくれた人が何人もいた。昔は肺病やハンセン氏病の患者さんが今のがん患者さんの立場だったんだと思う。でも肺結核もハンセン氏病も薬のおかげで、すでに怖い病気ではなくなっている。抗がん剤もすごい勢いで開発されているから、がんの怖さは急速に薄れている。それでもがんのイメージは暗い。支持療法が進んで今や抗がん剤の副作用もずいぶん軽減されているけれど、それでもがん患者さんは可哀そうな人と思われてしまう。がん患者さんに「がんばれと言ってはいけない」などと真顔で言われる。がんの世界でさえそうなのだから、がんはやっぱり悲惨な病気ということか。20年以上前は患者さん本人にさえがんは隠されていて、医者は「がんではありません」と嘘をつき、家族は必死にごまかして、不安やつらさを患者本人と共有することができなかった。病気そのものの辛さがあるのに、本当はがんではないのかと疑ったり不安になったりする精神的なつらさまで、昔の患者さんは抱え込まなければならなかった。がんだと教えてもらった方が気持ちも楽で前向きに病気と向き合える気がするけれど、死がチラついたときの人間の気持ちって私の想像以上に弱まるのだろうか。アメリカの影響なのか理由は知らないけれど、今やがんの告知はフツーに行われる。がんだと知って、自分の現実を認識しなければ、次の手が打てない。残された時間を大切に生きようとも思えない。自分が死ぬかもしれないと自覚することは、生きるうえでとても大切なことだと思うけれど、違うだろうか。がんになったところで、がんで死ぬかもしれないけれど、交通事故で死ぬかもしれない。何があるかなんて分からない。人生を充実させ、与えられた時間を大切に生きるためにも、がんを暗く考える必要はないし、がん患者は可哀そうな人でも、不幸な人でもない。豊かな日々を生きるために、「がん」によって目を覚まされた人。そんな気がするのだけれど、違うだろうか?