パリで暮らしはじめたばかりのころ




まだ子供たちも小さくて

私もフランス語ができなくて




信号無視のしかたとか

ミルクはどれを買えばいいかとか


パリ生活もまだ様子がわからず


友だちもなく




夫だけが頼りなのに

夫は仕事で3週間とか1ヵ月とか

長期的に留守になり




五歳だった長男に支えてもらう

みたいな日々をすごしていて




当時はアパート住まいだったんですけど

窓から外を眺めては


ひっきりなしに通りを走りぬけていく車に見とれ

あんなにたくさんの車がいるのに




私のところに来る車の一台もないのが

ひどく不思議で

世間から見捨てられた気分になっていたころ




かつて学校で習った

ロシア民謡なんですかねぇ

ステンカラージンの歌を思い出して・・・・



ステンカラージンに捕らえられて

たった一人連れて行かれたペルシャの姫君は

どんなに辛く、不安だったことだろう・・・・と



他人事とは思えず

姫の気持ちを思って

辛くなり・・・彼女のために涙を流したりもしていたのでした




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