近、とある機縁で、自分の名前をインターネットで検索することがありました。

いわゆるエゴサーチですね。

すると、自分でも忘れていた昔の記事がヒットしました。

タイムカプセルを掘り起こすような気持ちで開封すると、

日本篤志献体協会主催の、献体(解剖学実習に使う人体標本)

普及啓発事業の一環で、実習を終えた学生の感想文を集めたものでした。

たしか二十歳前後のものと記憶しています。

読み返してみると、若気の至りだったなと思う反面、


医学に対する素直な情熱や感動が前面に出ていて


若さというのは何物にもまさる特権だったなと思います。

恥をさらすようですが、掲示することで自分への戒めとし、

 

初心に戻って誓いを果たしたいと思います。

 

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解剖学実習を終えて

                                       moto

 思えばまだ18歳だった私が扱っていたのは、紛れもなく本物の人体

 

だったのでした。

 

およそ世間一般とはかけ離れた世界に浸かっていたことを今更なが

 

思い知らされます。


 実際に人体の構造を見ると、そのあまりの精密さに驚かざるを得ません。

 

理解が進めば進むほどに、筋、骨、神経、臓器は機能と正しく合致した

 

構造物であることを知らされます。考えれば水とタンパク質、脂肪、無機質等

 

の集まりに過ぎないのに、この実用芸術品は完壁なまでに計算されているのです。

 

単に幾つかの自然の法則によってでは説明のつかない、生命に与えられた

 

何かの意思を見た思いです。

 

 7ヶ月間、400万年をかけて進化してきた人類の歴史を直接目で見、

 

肌で触れ、その感触を味わうことができたのは、とても大きな意義を

 

持ちました。実習を終えた今、私は頭の中に、まったく無知であった

 

人体の構造をイメージできます。このイメージが、医学全般における

 

基礎なのでしょう。ここに、みんなが安らげる大きな家を建てられるか

 

どうかはこれからにかかっています。


 美しい桜も、春の陽気がなければ花を咲かせないように、私たちが

 

医師として花開くのは、皆様の協力があってこそと思います。人はよく、

 

ひとりでに成長したように錯覚する生き物です。しかし、その段階を上る

 

のは自分でも、土台は数多くの人々の協力で成り立っているのです。


 人体は最高の教材でした。


 会の皆様へは、感謝の申しようがありません。死して尚、輝きを

 

失わない強烈なメッセージ、しかと受け賜りました。実習、研修等で

 

患者さんと接するとき、必ず「いい医師になってくれ」といわれます。

 

大変な期待を受けていることを感じますが、健康で、若さにまかせて

 

何不自由ない生活をしている私たちは、なかなかその思いに気づく

 

ことができません。しかし、自らの肉体をもって迫る熱いメッセージは

 

心の奥底に刻み込まれ、常に打ち寄せてきます。


 私たちにできる恩返しは、医学の発展を願い、自分の体を提供して

 

くださった方がいるのを決して忘れず、優秀な医師となることです。

 

「ひとからひとへ」笑顔の伝達人となりたい。そのために精一杯の努力

 

を続けることを約束いたします。これからも、温かい目で見守っていた

 

だきたく存じます。いっそうの御指導御鞭撻を願います。

 

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以下は私の書いたスケッチ・・・

 

ではなく、レオナルド・ダ・ヴィンチの描いたものらしいです。

 

知の巨人の風格が漂っていますよね。

 

友人でありダヴィンチ研究者の桜川Daヴィんち氏のInstagramから許可を得て転載しました。

https://www.instagram.com/youshube/