再発リスクを考慮した術式選択 | 乳腺専門医かつ形成外科専門医・Dr.松の乳房再建

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京都駅前1分 まつたに乳腺・形成外科クリニック 松谷崇弘

部分切除でいくか、全摘±再建にするか、多くの方が悩むよね。

 

どちらでもいいよってお伝えしたら、逆に困らせてしまうことが多い。
どっちにもメリット・デメリットがあるからね。
 
今回は、部分切除か全摘かどちらを選択すべきかを紐解いてみたい。
 
先日、 再発のリスク因子について お伝えした。

診断時45歳以下、T2以上(腫瘍径が2cm以上)、リンパ節転移が4個以上、ホルモン陰性、グレード3

が再発のリスク因子だった。

これらは容易に想像できるよね。

腫瘍の性質がにぎやかだったり、Stage がアップすれば再発リスクも上昇する。

全身病とも言われている乳がんの再発は、個々の内因的要素に影響され得る。

だから、これらのリスクに応じて術後補助療法を選択する訳だ。

 

術式が乳房部分切除 or 全摘か、再建をしたかしていないか、切除断端が陽性か陰性か

は再発リスクへの関係性が薄い。

すなわち、外科的手術による影響は少ないってことになる。

乳腺外科医による 『とったど~』 的な雄叫びは、もはや意味がない?

極論すれば、手術なんて不要なのか?

 

そんなはずはないぞ、仮に転移があっても腫瘍量を減らすことは絶対意味がある。

白血病などの血液癌なら主に抗癌剤で治すわけだが、乳がんなどの固形癌の場合は治療薬が奥まで届くかどか投与してみないと分からない。

一方、luminal type(穏やかな乳がん)には抗癌剤が効きにくいので、乳がん患者さん全員に抗癌剤を投与すべきではない。

例えば卵巣がんは、腹膜転移があっても腫瘍減量効果によって予後が変わってくる。

だから、内科的治療だけで解決できない問題は必ずや存在する。

 

手術なんて不要だ!なんてことは、今のところ絶対ないと信じて仕事してる。

 

前置きがなかり長いね。

 

繰り返すけど、部分切除か全摘がとちらを選択すべきかって話ね。

 

先日の再発リスク因子を術式別に比べてみた結果がこちら

 

注目すべきは、Bp(部分切除)とBt(全摘)とで再発に差があった因子だ。

抜き出して、まとめるとこうなる。

上段の因子

部分切除をした場合、年齢やグレードによって再発に差があった。

全摘した場合、年齢やグレードによって再発に差がなった。

→ 45歳未満やグレード3の方は全摘ベター

 

下段の因子

部分切除した場合、腫瘍 2cm以上やリンパ節転移4個以上であっても差がなかった。

全摘した場合、これらの因子で差があった。

→   この解釈は非常に難しい。

部分切除後には放射線照射がセット、乳房切除した場合でリンパ節転移が4個以上の場合には照射を行なうが、1-3個の場合は省略がなされてきた。

つまり、T、N因子には放射線照射の治療効果によって再発を減らしている可能性がある。

 

個別化治療と言われるように、各々のリスク因子を考慮した上で、補助療法のみならず術式まで検討すべきかな。

腫瘍が小さいから温存で、大きいから全摘でといった簡単な話ではないかもしれないね。

 

また、術式と各因子によって再発の差があるってことは、外科的切除の意味があるとも解釈できる。

やっぱ、乳腺外科医 も 乳腺内科医も必要だ。

 

次のお題は・・・

『乳がんを綺麗に治す』

整容性と根治性の狭間にて

これぞ私の本業ね。

また後ほど