🕊️ 超高額薬剤時代、日本はどこまで支えるのか──“希望”と皆保険の間で

 

昨日の厚生労働委員会では、「超高額薬剤時代」における日本の医療制度について質問した。 

 

現在、医療は大きな転換点に入っている。

 

アルツハイマー病治療薬であるレカネマブ、ドナネマブ。数億円規模に及ぶ遺伝子治療薬も登場している。

そして一昨日、日本ではiPS細胞を用いた再生医療製品が公的医療保険の対象となることが報じられた。パーキンソン病に対するその治療は、薬価約5500万円とされている。

これは、日本の医学・再生医療にとって間違いなく大きな前進であり、患者さんにとっても大きな希望である。

 

私自身、再生医療に関わる医療現場にも携わってきた。その中で、再生医療が患者さんや家族にとって、どれほど大きな希望となり得るかを実感してきた。

 

だからこそ、この問題は単純ではない。「高いからダメだ」という話ではないのである。しかし同時に、希望であるからこそ、私たちは「持続可能性」を考えなければならない。

 

今後、再生医療、遺伝子治療、ゲノム医療がさらに高度化していけば、5500万円、1億円、3億円、あるいは5億円規模の医療が、決して珍しくない時代に入っていく可能性がある。

 

しかも認知症やパーキンソン病は、高齢化社会の日本において、対象患者数そのものが極めて多い

ここで重要なのは、単に「薬剤費」だけではない。

 

認知症治療薬では、アミロイドPET、MRIによる安全性監視、専門医療体制、長期フォローアップなど、医療システム全体への負荷も極めて大きい。つまり今後は、「薬価」の問題だけではなく、“医療システム全体として、どこまで支えるのか”

という問題になっていく。

そして、その財源の多くは、現役世代の保険料と税によって支えられている。

 

医療技術の進歩は希望である。しかし同時に、「その希望を誰が支えるのか」という問題から、私たちはもう目を逸らせない。

 

先日の質疑では、日本と欧州の制度設計の違いについても取り上げた。日本は、まず患者アクセスを優先し、比較的早期に保険収載を行う制度設計である。まず保険適用し、その後に価格調整を行う。

一方、欧州の一部では、保険適応以前に「費用対効果評価」をかなり重視している。

 

たとえば英国では、医療技術評価、いわゆるHTA(Health Technology Assessment)を通じて、「どの程度の効果があり、どれほど社会全体に利益をもたらすのか」を慎重に評価した上で、公的医療制度でどこまで支えるかを判断している。

これは冷たい議論ではない。

むしろ、「限られた医療資源をどう公平に配分するか」という議論である。

 

もちろん、日本型にも理念はある。患者が必要な治療へアクセスしやすいという点では、日本の皆保険制度は世界的にも非常に優れた制度である。

しかし今後、超高額薬剤が増え続ければ、「承認されたものを原則として速やかに保険収載する」という現在の仕組みを、そのまま未来永劫続けられるのか。

 

これは避けて通れない問題である。しかも今後は、単に「高額かどうか」だけでは足りない。

 

患者数。
QOL改善。
長期的な医療費抑制効果。
実臨床での有効性。
介護負担軽減。
家族支援。
社会全体への影響。

 

そうしたものを含めて、社会全体として、どの医療を優先的に支えるのかという“選択”が必要になっていく。

私は、再生医療を否定したいわけでは全くない。あの技術が保険適応になり、多くの人々が救われるといいな、と切に願ってきた部類である。

 

日本の科学技術や再生医療には大きな期待を持っている。だからこそ、熱狂だけで制度を設計してはいけないと思っている。本当に希望であるならば、それは次世代にも持続できる形でなければならない。

そして、この議論は、単なる財政論ではなく、「日本は、どのような皆保険制度を、次世代へ残したいのか」という、国家の哲学そのものの問題なのである。