💊動かない日本──第1章 補助金が生み出す“静かな病” 医師偏在対策のからくり

 

🏥 「足りない」のではなく「動かせない」

 

日本には現在、医師約34万人がいます。にもかかわらず、現場では「地方の病院が医師不足で閉鎖」「救急受け入れ不能」といった事態が常態化しています。それはなぜか。「医師が足りない」からではなく、“医師を動かせない制度”が存在しているからです。

 

💰 動かない構造を、補助金で延命する

 

厚生労働省は毎年、医師偏在対策として予算を計上します。令和8年度の概算要求ベースで見ると、

  • 医政局「医師偏在是正に向けた対策」:156.1億円

  • さらに都道府県が使う地域医療介護総合確保基金:613億円(この中に医師確保・地域医療の施策が含まれる)

資金はたいてい、

国 → 都道府県 → 医療機関(または受託団体) → 医師

という経路で流れます。結果、医師本人の報酬や生活条件の改善にダイレクトに届きにくい。設備・事務費・事業運営費に吸収され、“制度”は延命しても“人”は動かない。

これが日本の医療を鈍らせている根因です。

 

⚙️ 旧体制のまま止まった「医局システム」

 

大学医局による派遣は今も根強く、“地方勤務=本人希望ではないローテーション”になりがち。

その結果、短期派遣→疲弊→離職→再び補助金という悪循環が続きます。言い換えれば、補助金が「偏在」を固定化してしまうのです。

 

🌍 世界の常識、日本の非常識

 

諸外国は“人に直接”テコをかけます。

施策

年収インセンティブ

付帯支援

🇫🇮 フィンランド

僻地医療手当

都市部の約2.5倍

子どもの教育支援

🇨🇦 カナダ

Rural Retention

年+数百万円の定着手当

住宅・長期契約

🇫🇷 フランス

地方医師優遇

**年収+50%**相当の優遇

住宅・ローン優遇

🇯🇵 日本

医局派遣+交付金

実質変化が乏しい

単年度予算・制度依存

 

つまり彼らは制度ではなく“人”を守る。日本はその逆を続けています。

 

🧭 提案:「地域医療リワード制度」

 

医師偏在の解決は、“補助金の人への直結”から。

  1. 補助金を個人報酬化

  • 医師個人に直接支給(病院や受託団体経由を最小化)

  • 年収2〜3倍を明示的に保証する「地域医療リワード」を創設

  1. 家族・教育・住宅をパッケージ化

  • 住宅提供/子の教育費支援/配偶者の就業支援をセット

  1. AI・DXによるチーム診療

  • 遠隔診療・AI診断支援で過重労働と孤立を防ぐ

  1. 任期制+キャリア評価

  • 2〜5年任期をキャリア加点として評価し、“犠牲”ではなく“挑戦”へ

🏗️ お金の流れをスキップする

 

今:補助金 → 都道府県 → 事業・病院 → 医師

これから:補助金 → 医師(+家族支援)

 

お金の経路を短く・透明に“人”に直接投資する。

それが構造改革の第一歩です。

 

📉 「ハンセン病332億円」「震災60億円」と同じ構図

この問題は医療偏在に限りません。

  • 国立ハンセン病療養所の療養環境整備:332億円(R8概算要求)

  • 東日本大震災関連の地域医療再生支援:60億円規模(同)

いずれも“減らしにくい支出”となり、事業の出口設計が曖昧なまま維持されがちです。

言い換えれば、「問題を解決するお金」ではなく「問題を維持するお金」が流れ続ける。

そして、その“動かない構造”を覆うために、毎年また「次の予算」が積み増される──。

日本は今、“問題の再生産”で回っているのではないか。

 

🍙 結びに

 

医療は「命を守る」ための制度のはず。

それなのに、いつしか「制度を守るために命が犠牲」になっていないか。

補助金を積むのではなく、信頼を積む。

制度を維持するのではなく、人材(財)を大事にする。

それが、これからの日本に必要な医療のかたちです。

 

🐤 ひとこと

 

“仕組みを変える勇気”を!

 

📘 次回予告

第2章「終わらない震災──復興の名を借りた延命予算」

被災地で止まった時計と、予算が刻む“もう一つの時間軸”を追います。

 

注記(出典・立場)

本稿の数値は、各省庁の令和8年度概算要求および公開資料に基づいています。趣旨は“批判”ではなく、構造の健全化にあります。なお、本稿は筆者個人の見解・備忘録であり、所属政党・会派・委員会の公式見解ではありません