💉COVID-19ワクチンと発がんリスク──韓国840万人コホートが示すもの
「ワクチンは安全なのか?」
そう問われたとき、あなたは胸を張って「はい」と答えられるでしょうか。私はとてもではないですが、うなづくことはできません。
短期的な副反応、副作用(👈あえてこう言います)ばかりが議論されてきた一方で、長期的な影響、とりわけ「発がんリスク」についてはほとんど検証がありませんでした。
ところが2025年9月、韓国から発表された 840万人コホート研究 が、初めてそのベールをめくろうとしています。
もちろん、日本でも手探りの中で努力は重ねられてきました。実際、約1800万回分の接種データを紐づけて解析する試み(現在も継続中)は行われています。
しかし、それはあくまで限定的な集積であり、韓国のように全国民規模で一元化されたデータベースを用いた「国際的に通用する論文」としては未だ示されていません。
言い換えれば──
日本は現場の粘り強い努力に依存している段階に留まり、韓国はシステムと国家戦略でエビデンスを世界に示した。
その差が、国民にとっての「安心と信頼」の差に直結しているのです。
👤 840万人規模の大規模コホート
Kimらによるこの研究は、韓国国民健康保険データベースを用いた 840万7,849人 を対象としたもの。
ここまでの規模は、ワクチン研究の中でも世界最大級です。これは、医療DX先進国である韓国だからこそ可能となったもので、統一電子カルテで全国民のデータが一元管理されていることが背景にあります。
一方で忘れてはならないのは、日本の現状です。
我が国には、このように大規模データを迅速に解析できる「統一電子カルテ」も「国民健康データベース」も未整備のまま。
韓国が国全体を対象に科学的検証を進められるのに対し、日本ではデータがバラバラに散在し、国民に公開されることもほとんどありません。
この違いこそが、国民が抱く「安心と信頼」の差を決定づけているのです。
今回は、対象者を「接種群」と「未接種群」に分け、傾向スコアマッチングで年齢や性別などを調整。接種から1年後に「がん罹患率」を比較しました。
👀部位別に見えた「差」
全体のがんリスクは有意差なし。しかし、部位別に見ると結果は一変します。
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甲状腺がん:HR* 1.35
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胃がん:HR 1.34
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大腸がん:HR 1.28
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肺がん:HR 1.53
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乳がん:HR 1.20
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前立腺がん:HR 1.69
特に 肺がん(53%増) と 前立腺がん(69%増) の数値は、見過ごせないレベルです。
💉ワクチンの種類による差
さらに細かく分析すると、ワクチンの種類によってリスクが異なることもわかりました。
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mRNAワクチン:甲状腺・大腸・肺・乳がん
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cDNAワクチン(アストラゼネカなど):甲状腺・胃・大腸・肺・前立腺がん
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異種混合接種:甲状腺・乳がん
つまり「一律に安全」とは言えず、種類や組み合わせで異なるシグナル が立ち上がっているのです。
🚻年齢・性別での違い
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男性:胃がん・肺がんリスク↑
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女性:甲状腺がん・大腸がんリスク↑
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若年層(65歳未満):甲状腺・乳がんリスク↑
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高齢層(75歳以上):前立腺がんリスク↑
このように「誰にとってリスクが高いのか」まで見えてきています。
🖊️研究の限界と意味
もちろん、これは「因果関係を証明した」わけではありません。
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観察研究であるため、交絡因子が完全に除外できない。
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追跡期間は1年と短い。
それでも──840万人という母集団から統計的に有意な差が出た事実は、無視できません。
🐤なぜ重要か
ワクチン政策は「益と害のバランス」に基づくべきものです。
これまで短期的な有害事象ばかりが議論されてきましたが、今回の研究は「長期的なリスク」に光を当てました。
📌 メッセージは簡潔です。
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ワクチンががんリスクを上げる「可能性」が示唆された。
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よって、長期的なフォローと透明なデータ開示が必須。
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政策は「一律推進」ではなく、リスク差を踏まえた柔軟な戦略へ。
🌺結びに
がんリスクという重いテーマを突きつけた韓国研究。
その問いかけはシンプルです。
👉 「一律に安全と言えるのか?」
👉 「リスクを正直に開示し、長期フォローする仕組みを持つべきではないか?」
恐れるのではなく、現実を直視すること。
その勇気こそが、次世代の健康と医療を守る唯一の道だと私は考えます。
<脚注>
*HR(Hazard Ratio:ハザード比) は、簡単にいえば「ある要因(今回はワクチン接種)が、その後の発症リスクにどのくらい影響したか」を示す指標。
🔹 HRの見方
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HR = 1.0 → 接種群と未接種群でリスク差なし
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HR > 1.0 → 接種群のリスクが高い
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HR < 1.0 → 接種群のリスクが低い
ただし、これは「相対リスク」であり、実際に何人が影響を受けるかという 絶対リスク を併せて確認することが不可欠である。
