先日、日本フェムテックマイスター協会の会合に参加してきました。フェムテック振興議連の事務局長であり、自民党衆議院議員のみやじ拓馬先生(倍返し!の俳優さんに似ていると噂ですが、みやじ先生は恩返し!だそうです)の素晴らしい講演の後、私も登壇させていただきました。

 

 テーマは「パリジェンヌと日本女性ーフェムケアの文化的違い」。私にとっては得意な話題で、人々の興味を引く話題には事欠きません。しかし、今回はあえて根本的な違いを明らかにしました。なぜなら、それは皆があまり話したがらない部分だからです(婦人科医でさえも。これが問題です)。

 

 フェムテック関連のイベントやセミナーに参加して1年が経ちました。フェムテック運動の普及により、これまでなかなか話すことができなかった生理の問題やデリケートゾーンの悩みを共有できるようになりました。これ自体は良いことですが、真の目的は公共の場で女性の悩みや問題を共有することではなく、悩みを解決することであるべきです。

 私自身は、テクノロジーよりも女性の健康問題の解決の本質に焦点を当てるべきだと考えています。そのため、商品やデバイスの開発に重きを置くフェムテックには基本的にあまり賛同していません。吸水パンツ、月経カップ、布ナプキン、大人のおもちゃ、膣トレなどを否定するわけではありませんが、これらは問題の根本解決にはならないと思います。

 

 日本は、生理やニキビの痛みを和らげるためのピルの使用率、無痛分娩の実施率、更年期のホルモン補充療法(HRT)の使用率、HPVワクチンの接種率など、どれも先進国の中で最低レベルです。

 各種問題に対して自然なライフスタイルからのアプローチは素晴らしいと思います。実際私も、質の良い睡眠を主軸に置き、栄養や運動療法のアプローチはじめCBDを利用した生理痛緩和等、診療に取り入れております。しかし同時に、近代医学の助けを借りて効率的に健康状態を整えることも、当然支持されるべきです。選択肢の多様性を認めることこそが、現代社会の成熟の証です。

 一方で、女性の健康についての十分な情報や教育が提供されていない現状では、その選択肢が有意義に活用されることは難しいでしょう。これらの選択肢が有効に機能するためには、医療従事者、政策立案者、教育者、そして一般の女性たちが協力し、女性の健康についての理解と意識を高める必要があります。

 

 ご理解いただけたでしょうか。フェムテック先進国との比較は、カルチャー以前の問題です。そもそもベースが違います。近代医学の恩恵をリスクとベネフィットを天秤にかけ、バランスよく冷静に、効果的に活用すれば、健康の向上が確実に期待できます。ー例えばHRTなどは遺伝子に作用して生物学的な時計を遅らせる(つまり骨密度、心臓血管機能、認知症まで保護するだけでなく、抗老化効果もある)特効薬でもあります。


 人生100年時代に向けて、フェムテックは単に技術の進歩だけでなく、社会的な理解と教育の進歩も必要としています。そして、その中で、さまざまな問題意識を持つ思慮深い方々の声を共有し、広めることが何より重要と考えます。