何年か前にWebで調べ物をしていたら〈若年性更年期障害〉という文字列に目を奪われました。「これ何のこと?」とクリックすると、「30代でも更年期と似たような症状を自覚する人が増えてきています、ご注意ください」の記事。不審に思って疾病分類を検索したら該当するものなんかありません。ヒトを食ったメディアの創作だったのです。ヒトを食ったら犯罪ですよ。それがまたぞろ大手を振って歩いているらしい――。

以前にもSNSでコソコソ語られていた〈プレ更年期〉や〈プチ更年期〉について、私は「無用の誤解を招く」と使用しないよう訴えました。更年期の“更”は(夜が更ける=時間が経過する)こともありますが、(更新=旧来のものを新しくよいものに改める)こともあるのです。世の中がどうしても(ふける)にしがみつくのなら、この際更年期は止めにして、英語のメノポーズに合流する運動を起こそうかとも思いました。糸屋の娘だけではありません、歳をとったって女なら誰だって目で殺すことぐらいお手のものではありませんか。——— menopauseの正確な訳語は閉経期、大雑把に意訳にしたのが更年期です。〈若年性更年期障害〉はあたかも病気の一種であるかのように装い、若い日本女性たちを脅かして、未来をダークにする罪深いキャンペーンだと思います。

アラサー世代は女盛りなのです。恋も仕事も脂がのって、ブイブイいわせて肩きって歩いていいのです。個々の女性ステージでも妊娠出産に育児と、精神的かつ体力的にハードなイベントが畳み込んできます。パートナーとの関係性も微妙になったりして、良くも悪くもアップアップの危険を孕む綱渡りの最中でもあるのです。

ちょっとしたストレスでも性ホルモンは確実に乱れるもの。月経周期の乱れによる体調不良とかあっても正常の範疇です。10年も20年も狂いのない万事絶好調なんて、WONDER WOMANでも難しい。コロナ鬱に猛暑バテ、自律神経失調症で卵巣機能低下。更年期レベルの不定愁訴のような症状が、アラサーだからにないとは言えません。

そんなものを一緒くたにして〈若年性更年期障害〉とか、誰が指摘するのですか?———言いがかりではないでしょうか! 心配症の人が本当に閉経っぽくなって、SNSで訴えたらどうしますか? もっとも、レアケースで本物の早期閉経の方もいらっしゃいますから、定期的な婦人科受診はそれなりに大切なことですけど…。




メディアの皆さん、〈若年性〇〇〇〉とかの疾病分類に登載のないエセ医学用語を使うことは罪となります。エセ若年性更年期が10年、に本当の更年期が10年。20年以上も更年期を意識して生きろなんて、女性の人格を侮蔑否定する許しがたい破廉恥と思われます。

なお、昔からの諺である「風邪は万病のもと」は他人を脅かす言葉ではありません。先人たちからの「生んでもらった命を粗末にせずに、自分を大切にして生きてほしい」という教訓だと思うのですが、いかがでしょう?