First Step 漢方、パリでの漢方(最終回)

 

        在仏日本大使館医務官 間宮規章先生

 

いよいよ最終章です。会長の谷村玲実先生、名誉会長の松下フユ先生に土台を作って頂き、それを私がリライトしたものになります。

 



 

急性熱性感染性疾患といえば、COVID-19

自宅療養での対処として

家庭内隔離、マスク、手洗い、解熱剤:アセトアミノフェン服用

 (=Paracetamol, Doliprane, Dafalgan, Tylenol)。病後は自然に任せる・・

 

漢方はCOVID-19の予防、回復に有効である。

COVID-19に用いるエキス漢方:

 

— 柴葛解肌湯 ≒ 葛根湯+小柴胡湯加桔梗石膏

—  大青龍湯   ≒ 葛根湯+越婢加朮湯

—  柴朴湯    ≒ 小柴胡湯+半夏厚朴湯

—  人参養栄湯 (後半戦に)

—  補中益気湯 (予防に)

年齢に応じた規定量(麻黄湯・葛根湯)
24歳未満:成人量(7.5g/日)の3分の1
47歳未満:成人量の2分の1

 

葛根湯は発症してから手に入れては遅い。

 かかったかなと思ったら すぐ1回温服用。(常に常備しておくこと!

    朝の症状を昼まで待っていては遅い。

      ↓ ↓

2時間後にもう1回温服

 症状がなおったら、内服中止

 続いていたら、13回食前服用、2日間が限度。だめなら変更。解熱したら中止。

常備していて、さっさと温服が大事

 

漢方にも副作用

 

— 偽アルドステロン症:甘草(グリチルリチン) 

— 間質性肺炎:桂皮・黄・小柴胡湯+インターフェロン=禁忌

— アレルギー:人参ののぼせ発疹 etc.

— エフェドリンの作用(既出)

— 附子の過量によるしびれ

 

甘草と偽アルドステロン症

■症状 高血圧、浮腫、低カリウム血症(不整脈、脱力、筋肉痛)

■特徴 低レニン活性、高アルドステロンを呈する。中年以降の女性に多い。

    服用2-3週間後に発現することが多い

■治療 カリウム補給

■換算 甘草1g=グリチルリチン40mg 

 100mg/day以下・・・少ない(甘草2.5 g

 100mg/day以上・・・頻度高くなる

 

小柴胡湯と間質性肺炎

間質性肺炎とは

肺胞壁や細気管支細動静脈周囲など間質の病変を主座とする疾患。

 

原因が明らか:職業・環境性、薬剤性、毒物、放射線など

抗生物質・抗菌剤・結核療法剤・抗ウイルス剤・抗腫瘍剤・抗リウマチ剤・免疫抑制剤 ・IFN・GCSF製剤・プロスタサイクリン製剤 ・降圧剤などの服用により→急性間質性肺炎を起こすこともある

 

原因不明:サルコイドーシス、突発性間質性肺炎など

 

発症期間:投与開始後数ヶ月後

発症時症状:乾性咳嗽、呼吸困難、発熱

胸部X線所見: びまん性スリガラス状陰影

 

小柴胡湯の禁忌→インターフェロン製剤を投与中の患者、肝硬変、肝癌の患者、慢性肝炎における肝機能障害で血小板数が10/下の患者。

 

小柴胡湯処方時の警告→患者の状態を十分観察し、発熱、咳嗽、呼吸困難、胸部エックス線異常があらわれた場合は、すぐに投与を中止すること。

 

 

終わりに:

 

本講演は外務省・日本国政府 等の公式見解ではなく、和漢の学術的な一般論に基づく知識と、演者の経験・意見によるものです。

漢方の由来は中国ではありますが、長い歴史に渡って、漢方薬は先達の残した日本の財産ともいえます。西洋薬と漢方薬を使いこなせることはバイリンガルになる様なもので患者の多様性に応じて治療のアプローチが広がります。

 

                (了)