First Step 漢方、パリでの漢方(第2回)

 

        在仏日本大使館医務官 間宮規章先生

 

第2回目です。会長の谷村玲実先生、名誉会長の松下フユ先生に土台を作って頂き、それを私がリライトしたものになります。

<風邪の急性期における処方>


 

特徴的症状:赤い顔をしている人の場合は※ 青い顔の場合は*印の漢方を投与します。

(巽 浩一郎 著 呼吸器疾患 漢方治療のてびきから)

 

風邪症状に対する漢方薬 : 簡易版

—     麦門冬湯・・気道を潤すイメージ

— 咽頭痛  桔梗湯・・(湯に溶いてガラガラ・ゴックン) 速効

— 鼻汁   小青竜湯

     (葛根湯の鼻水版・花粉症の基本処方)

大青竜湯(麻黄湯と越婢加朮湯)

 

胃腸虚弱・神経質な方の風邪の初期  香蘇散



 

症状からの処方選択:

全身型(インフルエンザなど)

悪寒発熱(顔色は良い)→麻黄湯、大青竜湯(表寒実証)

悪寒(顔色が悪い)→麻黄附子細辛湯(表寒虚証)

項痛(後頸部痛)→葛根湯(表寒実中間証)

虚証(発汗がある)→桂枝湯、香蘇散(表寒虚証)

鼻炎型(鼻かぜ)

鼻汁・鼻閉→小青竜湯、麻黄附子細辛湯

気管支炎型(咳が主体)

咳・喘鳴(熱っぽい)→麻杏甘石湯(表寒実中間証)

薄い痰と咳(寒気)→小青竜湯(表寒実中間証)

 

病態からの処方選択:

漢方は本来症状処方ではなく病態から判断するのが通常です。

それには八綱(病態把握のための、尺度)を使い、陰陽虚実表裏寒熱という4種類(8項目)の物差しを使用します。これらによって、病態反応の性質や反応の起こっている箇所を認識します。

 

八綱

: 体表付近の病態

風邪を引いたときの発熱、悪寒、頭痛、鼻塞、鼻水、自汗あるいは無汗、身痛などの症状はみな表証 

: 人体内部に発生した病変のこと

半表半裏;
半表半裏証とは、病邪が完全に表にあるのでもなく、また完全に裏に入ったわけでもなく、表と裏の中間にあるものを言う。表証の寒熱往来(寒けと熱が交互にくる症状)。裏証の胸脇苦満、心煩(内熱によって起こるいらいら、不安)

寒熱 

寒:寒気 冷感 厚着をする 暖かいものを好む夏でも寒がる。神経系の機能沈滞。新陳代謝の異常低下。自覚的な冷感。

熱:患部や体の一部が熱っぽい。冷水を好む。冬でも暑がる。炎症。興奮。自覚的な熱感。新陳代謝の異常亢進。

 

また、生体における陰陽と疾患のとらえかたは以下の表にまとめられます:

 

 

<ものさし(2D)で見る風邪の漢方>



 

出典:伝統医学データベース///風邪症候群

 

漢方薬処方は実虚・陰陽の病態で位置づけができます。

 

さて、八綱以外の診断法はあるのでしょうか?

是(はい)! 生体の変調を気血水で探す方法、六病位(太陽、小陽、陽明、太陰、少陰、歌陰)で探す方法、そして五臓(腎、肝、心、脾、肺)で探す方法があります。

                                           (つづく)