”第一回フェムテック東京”最終日は一般デーでしたが、前日ビジネスデーの方が、はるかに多くの人で溢れかえっておりました。知名度がイマイチなのか、製品の完成度がなお不足しているのか。どっちかなんでしょう。展示会全般の感想ですが、Dr.MANA、辛辣になってしまいそうなので、また別の機会に述べさせていただきます。





 

というわけで最終日、ダルビッシュ有や、田中みな実、松山英樹選手愛用で知られるホットタブ株式会社ホットアルバム炭酸泉タブレット )の小星社長さまとのトークショーは和やかに終了。

  


小星社長は、なんと老眼と白内障と無縁とか!?その秘訣を特別にご披露いただきました。睡眠美容、重炭酸温浴、CBD”と、わたくしの十八番コンテンツ。プラス、現在アレルギー学会や皮膚科学会でも広く認知されてきている「経皮感作」の怖さについても触れました。私の“マイクロドーズ外用推奨”については、複数の根拠があるのです。

 

★フェム発言アーカイヴ★その1


EXPOでは、VIO脱毛についてのブースも散見されましたが、今から丁度6年前、当時連載をしていた東洋経済オンラインで“介護脱毛”の記事を載せたことがありました。結構先駆けだったと思います。なんなって、デリケートゾーンとかフェムケアという名称はまだ浸透していなく、“性器周りケア”(響きがショーワ!)ですからね。まだご覧になっていない方のために、以下に再掲載します。

 

パリ女性とは違う日本の「性器周りケア」事情

60歳女性は、なぜ脱毛を決めたのか   

 

1014日に配信した「パリの男女の『性器周りケア』は超先進的だ」 は、多くの皆さんから様々なご意見をいただきました。女性の方々からは、「なかなか声にできない悩みを言葉にしてくれてありがとう」というエールが圧倒的で、とても嬉しく思いました。お寄せいただいた情報など、わたくしのブログに載せています(岩本麻奈オフィシャルブログ「はだぢから開発室・分室」

さて、今回は日本のアンダーヘア(UH)&デリケートゾーン(DZ)事情についてご報告いたします。美容医療の現場に携わっている側として言えば、医療用脱毛レーザーによる処置は定番です。脇や手足のムダ毛と同じように、DZでもレーザーが適用されています。正確にいえば完全なる永久脱毛は医療レーザー技術ではまだ達成できていません。しかしながら、2〜3カ月おきに4〜5回ほど施術されたら、(個人差はあるとしても)ほぼ永久脱毛レベルにまで達していると申していいでしょう。  

VIO脱毛」を希望するのは、若者だけではない  

若い方では、VIOゾーン(V=ビキニライン、I=外陰部周り、O=肛門周り)の全脱毛希望が多くなってきました。ショーツやビキニラインからはみ出す心配がないこと、生理時に清潔感、清涼感を保ちやすいこと、セックスで自信が持てる、といった理由だそうです。

少し驚いたのは、品のいい60歳あたりの女性に、この全脱毛を希望される向きが少なくないという話を聞いたことでした。

60代前後の実施が多いのには理由があります。レーザー処置は、濃い色の部分を選択的に判断し、熱エネルギーに変えて焼き切るという仕組み。皮膚と毛の色のコントラストが強く、硬めの毛質である黄色人種にとっては、理にかなった処置法と言えます。

 

一方で、ヘアの色が薄くて細い北欧系の方や、肌の色が濃いアフリカ系の人の場合は、機械での判別が難しく、効果的でないというか、施術結果にムラが出やすいといわれます。これが、日本人の場合に白髪が多く混じる前の60歳前後に全脱毛をされる人が増えている理由だと思われます。最近では白髪、産毛対応のものも出始めたようですが、思い立ったら早い方がよいと言うことでしょう。

わたくしの関わっている美容クリニックによると、この60歳前後の女性の脱毛処置は10人に23人くらいの割合だそうです。パリのマダムの場合でしたら、「新しい恋人の趣向?」などと憶測しがちですが、日本女性は全く理由が違うのです。  

「他人様に少しでも迷惑にならないように・・・」  

聞くところによると、「齢を重ねれば、何から何まで他人様の手を煩わせることになりかねない。その時に少しでもご迷惑にならないようにしたい」とのこと。確かに、介護でシモの世話をもしていただくこととなれば、世話をする側もされる側も、毛はない方が衛生的であり容易であるに決まっています。生れたときの姿に戻る、これもまた終活の一つかも知れません。

初めてその話を聞いた時には、少なからずのパリのマダムが自分の性的魅力アップのためにするUHケアであるのに、日本人女性の場合は、なんと切なく寂しい情景なのか、と悲しくなりました。ところが、じっくり調べてみると、どうもそうではないのです。これは美意識。しかも、「終わりを美しくする」だけではない、遺された人たちに「これは参ったな」と思わせる美学なのです。きわめてセンシュアルな、日本人ならではのだと感じました。そして、ある情景が脳裏をよぎりました。

 

紅絹裏(もみうら)という語、ご存じですか? 紅絹(もみ)は緋紅色の絹織物のこと。もとは下染めに鬱金(うこん)をつかい紅花(べにばな)で染めました。江戸期から男女を問わず着物の裏地に――こと胴裏や袖裏に――よく用いられ、紅絹裏という慣用語が出来ました。

かつて粋であったものは、使い方次第で野暮にもなりますから難しいのです。だけれど、レトロであるからこそ、キモノなればこその、目に飛び込んでくるショッキング・スカーレット。わたくしは、その鮮やかさにドキリとします。

紅絹裏は文学作品にもよく現れます。夏目漱石は、自伝的小説『硝子戸の中』で、母が若いころ御殿への奉公に上がっていた面影を、蔵の中に見つけた、紅絹裏をつけた着物表の桜や梅が染め出された金糸銀糸の裲襠(かいどり)に想像します。漱石の作品世界において、原色の綾なす場面は珍しく記憶に残ります。

菊池寛は、短編小説『大島が出来る話』で、主人公の譲吉と学生時分世話になった近藤夫人との関係を鮮やかにすくい取って表現します。ある日、近藤夫人は突然死に、譲吉は大きな虚無感を抱えます。そして、形見としてもたらされた大島紬。

――大島の羽織と着物とが、拡げられて居た。裏を返して見ると、紅絹裏の色が彼の眼に、痛々しく映った。


と、譲吉の心理を抉り出すのです。愛惜だけではない、年上の女性への敬慕が限りなく恋慕を触発する一瞬ながら、すでに幽明境を異とする身である現実の悲嘆。してやられたような、だからこそ美しく去ってしまわれた残像。泥大島の紅絹裏ひとつの粋といっていいでしょう。UH&DZの全脱毛と紅絹裏。日本の60歳もなかなかのものです。

(2016年10月16日)

 

ではみなさま。秋の夜長に長湯でよき睡眠を♪