パリに住んでいたころは、「私の身体はパリジェンヌと同じ素材でできている」と思い込んでいました。フランスではワインの良し悪しを「いかにテロワールを表現しているか」で判断します。Terroirとは土地。その土地における最適のぶどう品種をもって生育年の気候・土壌・地形など、その地ならではの風土を表わしたワインこそがTrès bienなのです。

人間だって有機体に変わりはありません。I/Oされるものは水や食物だけではありません。目から入る景色風物、鼻からの香り、耳から楽の音のようなフランス語、美食と全身で感じる花の都の空気…。私の身体はパリで満たされていたのです。そう思っても強ち虚偽とではないかも? ご安心ください、今はまったく和人です。

日本の神様は基督教と違い唯一つなんて吝嗇ではありません。日月風雨、山川草木、森羅万象、神様だって八百万もいらっしゃる。私も生まれてから半世紀、いろんな神様を拝んできました。巨石・大杉・大楠・リンガとヨニ・龍・蛇・狐・犬・馬・猿・河童etc。なんと広大無辺なことであるか。

 

 しかしながら、今回は驚きました。“なまずさま”でございます。



 

 神様との出逢いは、日本三大美肌の湯で有名な佐賀県嬉野温泉(他の二つは島根県斐乃上温泉と栃木県喜連川温泉)の温泉街にある豊玉姫神社。姫は龍神の娘にして美肌の女神であらっしゃいます。そのお使いが“なまずさま”

 お手水舎の温泉水で潔斎して、お参りの作法は「なまずさまの前に立ち、心を穏やかに整え…、二礼二拍手一礼…」。はい。「美肌の素肌健康、しわ退散、皮膚病退散 などの願いを込めて、聖水を、なまずさまにかけてください」と。

なんと、これはすべての皮膚科医及び患者様の願い望むことではありませんか。

なまずさま、ナマンダブ、もとい。なまずさま、畏み畏みお願い申し上げます」



 

ん?なになに「嬉野地区では、なまずさまを粗末に扱ったり、危害を加えると祟りがあるので、食用にすることさえ禁じているというほどです」とか。

 ええっ! 私、学生のころ銀座の『酒の穴』で、フロリダのcatfishの天ぷら食べたことある。Catfishってナマズじゃん。あと、中国の山奥で“なまずの仲間”とかも食べた。

こりゃタイヘン、皮膚科の神様とはつゆ知らず、大変な過去があったのだ。もう私はキズモノか、今さら謝っても時間を戻すことはできない。美肌祈願で来たけど、いかんともしがたい……。

いや、これは考え方をチェンジしよう。すでにしてDr.MANAは美肌のご神体を腹に入れている。「われは神とともに生きてきた、これからも神とともに、美肌の素肌健康・しわ退散・皮膚病退散。皆様の願いを成就するために精進しようぞ」と、改めて神さまにお誓いしたのです。日本の神様は度量が広くて大助かりです(ホッ)。



 

「嬉野温泉」九州は火山国で全国有数の温泉が各地に湧き出ております。「肥前風土記」に「東の辺に湯の泉ありて能く、人の病を癒す」と記され、江戸時代には長崎街道の宿場町として栄えたのが嬉野温泉。効能は、リューマチ、神経痛、皮膚病、婦人病、貧血症、切り傷、呼吸疾患など。その源泉は熱く煮えたぎるマグマではなく、むしろ地層の段差から滲み出てくるもので、天然のフィルターから長い年月をかけて滲んできたもの。

 違いは水に“触れる”だけでわかります。透明で匂いがなくどこまでの優しい肌触り。天然のトロトロ美容水。食塩と炭酸水含有で弱アルカリ性。ナトリウムを多く含む重曹泉は、皮脂や分泌物を入荷して洗い流し、血行も促進しますのでつるりとみずみずしい肌をよみがえらせます。