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 ナマステー。世界中の登山家たちの夢の玄関口、カトマンドゥの喧騒。

 

 一生に一度、世界最高峰エベレストをこの目で見たいからカトマンドゥへ。けれどとてつもなく酷い高山病の経験がある上に根性なしだから、高地トレッキングとかではなくて飛行機で接近することにしました。


「ネパールの飛行機はしょっちゅう落ちるから、やめときなさい!そもそも山に囲まれて作られた空港自体がすごいリスキーなつくりなのよ」ネパールに駐在歴ありの、外交官の妻であったマダムから何度も注意されていたのでしたが。45分遊覧で200ドル前後とコスパもいいし(それが原因では!?)、何しろ他の選択肢はありません。

 

 こういう時に、リスクテイクしてしまうわたくしです。

 雨季でも決行したのは、夏休みが都合がよかったのと、いくつかのブログで“雲の上から見るから、地上が雨でも大丈夫”との情報を得ていたから。催行会社の“悪天候等でフライトキャンセルの場合は、翌日の飛行に振り替えるか、全額返金します”という良心的な提案もあり、翌朝を予備日として、申し込んだのでした。

 

 飛行予定の朝は雨でした。けれど、山は雲の上だし快晴に決まってる。よっぽどの悪天候でない限り“飛べば見える!”と信じ込んでおりました。幸い風はほとんどありません。

 

 まだ暗い早朝(5時半)、ホテルでピックアップされ空港に向かいます。

 

 遊覧飛行ですが、国内線と同じ扱いです。そして朝しか飛びません。山特有の天候のこともあるのでしょうが、むしろ日中は通常便の航空機が大渋滞で、そちらを優先しなくてはいけないからなんでしょう。なにせ滑走路が国際線国内線遊覧飛行線ぜんぶ合わせて“たったの一本”しかないとのこと。

 
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 私たちはイエティエアー。なんかちょっと頼りないけど、雪男、頼んだわよ!

 
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 電光掲示板には「悪天候によりディレイ」の表示。フム。雨は止んで、太陽が顔出してきているのにヒマラヤはまだなのね。山の天気とも言うしね。

 

 最悪明日朝のツーチャンス!とは思いつつ、早起きしたんだし、ここまで来たんだし。やっぱり飛んで欲しい。そんな思いで待つこと20分超。催行決定の嬉しいアナウンスが!

 やったー!飛べばきっと見える。”お先行ってきますよ”まだぼーっとアナウンスを待っている大勢の人たちのうらめしそうな視線を受けつつ搭乗口へ。


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 超ワクワク〜!!


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 席は横3席で両端に一人づつ(AC)、よって全員窓際席です。イエティの場合、6、7、8の番号が羽にあたりますので、できればそれより前か後ろがベスト思います。往路はA側、復路はC側に山系が姿を現わすそうで、あとは順番にコックピットに呼ばれるのだそう。楽しそう!


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 そのうちに雲の合間から何やら雪山が!

あれ、何山?もしや高いからエベレスト?一気にハイになったわたくし。(単純なんです)


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 “エベレストは最後です。あれは最初に見えるランドマークのランタンですね”CAさんが説明してくれました。

 

 ランタン!そうか。次は??? 


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 五里霧中な状態が続きます。雲の上にさえ出れば!の願い一心。


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 ところが期待に反して、いくら上昇しようと視界は真っ白のまま。そのうち雲の上に出ましたが、何も見えず〜。あれ?話しが違うやん。飛んだら見える、じゃなかったの??


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 こうなったら途中の山々(7000メートル級ではありますが)はもう諦めた!エベレストだけでも見えればいい!なんなら山の先っちょだけでもいい。

 
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 エベレスト最接近(と思われる)のところでのターンは、願い虚しく真っ白な視界の中で行われました。

 

 “みなさま〜。今日は視界が悪く誠に残念です。帰り際にチケットカウンターに寄ってください”

CAさんからのすまなさそうなアナウンス。

 

 こんなのだったら、飛ばなければよかったのに。(飛んだら見える、と思っていただけに落胆が大きいわたくし。ちょっと考えれば、そんな訳ないですのにね)そうしたら明日に振り替えられたし。飛んでしまって見えなくても航空会社のせいではないから、これは本当に数少ないアンラッキーパターンかも。

 

 前半は少しの雲の隙間も逃すまいと目を凝らして声かけあって外を見ていた旅客たちも、帰路はシーン、と、まるでお葬式のようでした。

 あんなにはしゃいで搭乗した自分がやるせない。ヒマラヤまできて、危険冒して唯一見えたのがランタン。ハロウィーンのかぼちゃランタンと同じ。君のことは一生忘れないよ。


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 そういえばCAさんのいっていた窓口の案内って?“残念割引しまーす。もし明日も乗るなら5割引!”とかになるのかしら。どうせ明日朝は予備日で空けてあるし、こうなったら割引にならなくとも再度トライしたい気分だけど。それでまた五里霧中の暗中模索飛行だったらかなり応えそうだけれどね。 ふーむ。いかにすべか。


 窓口に行くとあっさりと“無償で再度搭乗可能”とのことでした。なんと太っ腹!曇っていた皆の顔が一気に晴れました!二度目のリスクテイクですが、そこは敢えて考えない。

 きっと明日は晴れるわ。晴れてほしい!ジェットコースターのような気分の浮き沈みを体験したヒマラヤの朝でした。

つづく…