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 パリのテロから1年を経った11月13日、90名の犠牲者を出したバタクラン劇場が再開され、メディアにはステージに立って歌うスティングの映像が流れていました。「僕らは彼等のことを忘れない」と。そして劇場には犠牲者の銘板が設置されました。


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 翌日、友人の誘いで近くのレストランに行く途中、その場所を通って祈ってきました。チラチラと灯る鎮魂のキャンドルが周囲の空気を温め、手向けられた数え切れないほどの花束。現代は偶然の断絶と隣り合わせの日常の中にあるのです。
「秋夜の月」という14世紀中国で戦乱に翻弄された詩人の歌を思い出しました。

――秋夜の/黄金の波/人の哭するを照らし/人の歌ふをてらす/人歌ひ人哭すれど月は長に好し/月欠け月円かなれど人は自ら老ゆ

 秋の夜の月が輝く。月の光は金色の波となって地上に降り注ぎ、哭(な)いている人を照らし、歌っている人を照らす。人は歌い、人は泣き、月は永遠に美しい。月は欠け、月は満ち、ただそれを繰り返す。そして、人は人ゆえに老いていく。


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どんな世になろうとも、私は愛に生きたいと思いを新たにしたのです。

14日の68年ぶりのスーパームーン。ヨーロッパ各地で見られた見事な月も、パリでは悲しみのヴェールに閉ざされて、雲の向こうに隠れたままでした。