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物心ついたときからフランスで暮らし、今や“思考回路はフランス人、根っこは日本人、そして外見はジャパンエキスポ”といった出で立ちの次男坊です。ちなみに彼が手に持っているのは、なんとマルクスの『経済論』。

今回は高校最終学年の彼が、バカロレア(日本で言うところの共通一次試験みたいなもの)用の日本語テキストの中にある、“在仏◎十年の某エッセイストによる日仏文化比較論”を読んだ後、彼自身が日本語で書いた概要と分析、そして感想をご紹介したいと思います。細かな日本語の間違いは少々ありますが、そのまんま掲載します。

さて、ティーンエイジャーの目からみると、このふたつの国はどう映るのでしょうか?

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Description / Analyse

この文は某エッセイストによるフランス人の生き方についての説明です。フランス人を知っている人々にとって、この文は著者の限られた体験に基づく意見でしかないと思うのは当たり前です。しかしそれなりに面白い記事ではあります。ですがフランス人の日本語試験にこうした文章を出題するのはあまり適切ではないように思います。1,2例をあげて、フランス人の生き方について、日本社会と比べて説明してみます。

まず筆者はパリジャンの悪い所を持ち出しますが、単に自分が不愉快な気持ちを味わうことになったフランス人の行為を指摘しているだけです。日本人にとって、そのパリジャンの悪い性格がなぜなのかをきちんと説明することは必要と思いますがその説明はまったくありません。

「窓口で平気でマニキュアを塗っている」はずかしさがまったくない人はフランス人には限りません。電車内で化粧をしている女性は日本にもいっぱいいます。

日本人はパリジャンより清潔だと言えるでしょう。例えばパリの市街はきたないし、病気もあまり気にしないし、平気で歩いています。一番きたない所は地下鉄で、地下鉄では、なるべくものにさわらないようにしたほうがいいでしょう。しかもフランス人は日本人ほど手を洗いません。さらに、パリ市内でも一人で安全に歩けない地域があります。特に夜間の女性の一人歩きは危険です。これは東京との大きな違いです。

また、筆者が記すように、フランスには、接客態度の悪い店員や従業員が多いのも事実です。なぜなら、フランス人の仕事の概念は日本人とちがって、なるべくはたらく時間をへらしたいし、仕事にまきこまれたくないからなのです。

他方、パリでは比較的人種差別がありません。それはパリで、いろんな人種が生活しているからです。そいう点も、日本には主に日本人しかいないので、日本ととてもちがう点です。

その後、筆者はフランス人を観察し続け、彼らの「わがままさの影に、優しさとか、思いやりとか、反省というのがある」とわかってきたと書いていますが、どうわかったのかの説明はありません。「フランス人って、なかなかいいじゃない」とどうしてそう思うようになったのかはわからないのです。たぶん日本人の目でフランスの社会を観察しただけなので、(フランスの社会と日本の社会は基本的に違いますから)限界があったということでしょうか。外人として、フランス人について最初に受けた感じがフランス生活が長くなるにつれ、薄められただけという可能性が高いと思います。

愛について例として話していますが、それ以前に、フランスでは特にパリジャンにとっては、愛はまったく第一ではないと言わないといけないとわたしは思います。私の周囲のフランス人の友人たちには「愛が第一」などと考えている人はいません。日本人の思い込みではないでしょうか。

そして、自分の意見が決められないときにはまずとりあえず「ノン」というフランス人にも私はほとんど会ったことがありません。まだきめてない時はノーよりただ’知らない‘か’きめてないと言います。日本ではまだ知らない人に愛の告白をされることがあるかもしれないけど、フランスでは(若者以外に)めずらしいこととはたしかです。ですが、もちろん親しくなっても、告白でかならず付き合うことができるわけではありません。

フランスで人々は好みがちがうと言う考え方も大体たしかです。また、日本人より、はずかしさがなくて、フランス人はきらいな人にはっきり言います。

しかし、筆者はフランス人のお金の使い方について大まちがいをしていると思います。フランスもアメリカ文化の影響を受けていますし、お金はフランス人にとってもとても大事です。

また、子供のバースデー・ケーキを買うフランスの母親がいないわけではありません。ただ、フランス人の母親は筆者が記すようにフルタイムで働いている人が多く、したがってふだん子供の面倒も良くみられないから年に一度の子供の誕生日くらいはケーキをつくって祝ってやろうという人が多いのだと思います。

筆者のいう1.5リトル入りボトルで歩いてる若い女性には私は会ったことがありません。日本人と同じようにフランス人は経済観念があるので、500cc入りボトルより1.5リトル入りの方を買いますが、持ち歩くのではなくただ家で飲むためだから、冷蔵庫にすぐ入れます。

フランスでは人まねはたしかに嫌われるけれども、むしろ逆にフランス人は大体同じ服、同じ色を着ています。東京ではパリより流行をおっかける若者が多く、パリジャンの着方は目立たないように着ることです。だからちょっと人とは違う服を着ていたら、すぐ指をさされます。東京ではだれも指をさしません。フランスは個性ゆたかな国だけれど、筆者はその理由を勘違いしているように思います。

フランスとくにパリではこの筆者が言うほどマイペースに生きている人はいないし、’生きる知恵’というのもフランス人は知恵についてそれほど深刻に考えているとは思えません。   (了)




第2外国語のクラスでこの意見を発表した時に、彼は大多数の友人の賛同を得たようです。

「私は一箇所だけ同意できないなぁ。どう見てもフランス人は全方位アムールやん!」って反論したら、「ママの年代の人はそうかもしれない。これは、だから……僕達の年代のことだよ」ってバッサリ斬られましたわ。
( ̄▽ ̄)