さきほどの続きです。
上図③の箇所を文章化してみます。
(まずは、ピラミッド構造に直接かかわるパーツだけです)
↓
③ 各部門が自らの部門方針を考え抜くに相応しい「機能連携方針」を、打ち立てる
ご覧いただくとわかるとおり、
戦略要素レベルのプロセスは、特定部門の奮闘努力で実現するものではありません。
複数の部門が連携して初めて実現する全体像であることがわかります。
まさに、この点がミソです。
事業方針として示す項目ラインナップのなかに
特定部門が頑張ればなんとかなるものを含めることは賢明ではありません。
そのような項目は、各部門が自らの部門方針を打ち立てる際に登場すればよい話です。それを、事業方針として部門に示すことは、各部門が自ら考えて部門方針を定める自己決定機会を削ぎ、受け身・指示待ち、やらされ感の風土を助長します。組織の閉そく感を招きかねません。
事業方針として示すべきは、
各部門が、自らの頭で自らの部門方針を考えることに示唆に富んだ内容が望ましい。それは、「特定部門の奮闘努力でなり遂げられるものではなく、複数の部門が連携してはじめて実現する“協創テーマ”」であることが望ましいのです。
以後、
これを「機能連携方針」と呼ぶことにします。
機能連携方針を立てる
要領は以下の通りです。
[step1] ゾーニング
まず、
戦略要素レベルのプロセス全体を俯瞰して
同図において、強化すべき領域をゾーニングしてみましょう。
領域の数は
5つ程度にします。
領域の数に確固たる基準があるわけではないのですが、6つ以上になると、情報受け手は途端に全体像が掴みにくくなるようです。
このあとの検討を通じて
最終的な個数は増減する場合がありますが
基本的には[領域の数=事業方針の数]になります。
重点志向を徹底するためにも、「一つでも少ない数で、ビジネス全体を説明する」という気概で臨みましょう。
たとえて言うなら、
重回帰分析において、説明変数X1,X2,X3…Xnと、並べようと思ったらいくらでも並ぶ右辺をバッサリ削って、より少ない説明変数で、重回帰係数をマックスにするイメージです。
[Step2] イシュー立て
次に、
一つ一つの領域に
タイトルをつけます。
タイトルの書き方で
私が好んで用いている表現形式は
「いかに、・・・を、・・・するか」
という、第3文型の表現形式です。
ただし、
主語は意図的に削除します。
ここで主語を記載すれば、その機能を発揮する主体を指示していることになり、各部門の主体的自己決定機会を削ぐことになりかねません。
主語はあえて取り除き、
その代わりに、文章の頭に「いかに」という接頭語をつけて、「(組織を挙げて)いかに、何を、どうするか」という問いを立てるのです。そして、その問いを、関係各所に投げます。
投げられた各部門は、「自部門として、この問いにどう応えるべきか?」を考えます。その問いの答えが、部門方針になるのです。
さて、
これまで様々なケースを見てまいりましたが
打ち立てたイシューには
受け手の思考をドライブさせる卓越したケースが存在する一方で
受け手の思考を停止させる残念なケースも見受けられます。
後者の残念なケースの多くは
イシューがザックリ抽象表現になっていたり
ド正論すぎて「それはわかるが、それができなかったから、いま困っとんやないか!」と口答えしたくなるような内容だったりします。
そこで、
次の要領を通じて
イシューの解像度を高めることを試みます。
[Step3] イシューからみた現状把握
このステップは、
イシュー内容が「ド正論」の場合に特に有効です。
そのイシューについて
いま何ができていて、何ができていないのか。なぜ、できていないのか。
そのような現状把握と原因究明がなされていると、イシューの記述内容は格段に良好になります。
[Step4] 機能連携方針を立てる
前項の
イシューから見た現状把握と原因究明をふまえ
イシューの記述内容を必要に応じて加筆修正します。
ぼんやりした抽象論やド正論を、現状のふまえた地に足ついた記述に洗練化させるイメージです。
初期に設定したイシューが
もともと現状のふまえた地に足ついた記述内容になっていたなら、機能連携方針の記述内容を特に変更する必要はありません。同じ内容をコピペすればいい。
しかし実際は、
イシューから見た現状把握と原因究明を踏まえて
イシュー内容に加筆修正を施す場合がほとんどです。
[Step5] 戦略要素と管理点を設定する
TQM分野において
方針は「目標」と「方策」の二つから構成されます。
本書の文脈に即して換言すると
前者は、管理点(結果系KPI)に相当し、
後者は、そのような管理点(結果系KPI)を達成する上で、特に重要な経営資源(戦略要素)が相当します。
管理点は「その機能連携方針は、どのようなモノサシを用いれば、達成/未達の程度を評価することができるか?」という問いの答えです。そして、戦略要素は「数ある経営資源のなかでも、その管理点を達成する上で特に重要な経営資源は何か?」という問いの答えです。
ここで注意したいことは
機能連携方針の内容が頓珍漢だと
思うように管理点と戦略要素を定めることができないという点です。
KPIに置き換えられないような機能連携方針、
あるいは、特定の戦略要素を同定できない機能連携方針は、
いずれも、方針として相応しくありません。
KPIに置き換えられない内容だということは
期末評価において、達成/未達の程度を評価することができません。
それでは、PDCAになりません。
また、しかるべき戦略要素を同定できない内容だということは
KPIを達成するためのアプローチを組織に示すことができていないということを意味します。
統制が取れた組織行動を取ることが難しくなります。
「機能連携方針」と「管理点(結果系KPI)」と「戦略要素」は、相互に行き来して、三者間の関係をチューニングする必要があります。
以上の検討をまとめたものが
「イシュー連携管理」です。
この表を用いて
次講で述べる「統合的KPIマネジメント」を実践します。
<んー、、、なんかまだしっくりこない。。しばし、考えます>