抗インフルエンザ薬のタミフルは、2003年に限ると、世界での年間流通量の75%が日本一カ国だけで消費されており、2007年になってもその割合は70%でした。ただし、その後は国産のゾフルーザを含め抗インフルエンザ薬の選択肢が増えましたので、タミフルへの依存度は見かけ上は減っています。
 よく知られた話ですが、抗インフルエンザ薬を投与しても、他の人に移す可能性のある感染期間は短縮しません。むしろ熱が下がって体が楽になった分、早々と外に出るようになり、感染を広めてしまうかもしれません。
 ところで、2009年パンデミックのH1N1インフルエンザウイルスは下気道での増殖力が強く、鼻腔拭い液検査での陽性率はせいぜい50~60%です。それ以降、このウイルスは季節性インフルエンザ化したため、近年ではインフルエンザ罹患が確実と思われた患者さんが、鼻腔拭い液検査で陽性にならないケースが増えています。
 以上から、

① 日本は抗インフルエンザ薬を大量に使う
②  鼻腔拭い液検査は陽性率が低くなっている

とまとめることができます。
 今後は、インフルエンザかどうかを診断する際には、抗インフルエンザ薬が基本的に必要な人(妊婦、乳幼児、高齢者、呼吸器や循環器などに疾患がある患者など)では特に、鼻腔拭い液検査だけではなく、全身症状からの臨床診断も併せた判断が必要と考えられます。
 また、抗インフルエンザ薬の使用量を抑えるためには、比較的症状の軽い成人などでは、あえて迅速検査や投薬をする必要はなく、自宅療養を促せば十分という認識が重要かと思います。
 ただし一方で、インフルエンザは基礎疾患のない健康若年成人や健康学童でも重症化することがあるため、「若くて健康だから重症化しない」という予断は禁物です。あくまで、症状が最も重視されます。