2024.02.16XML
4/14新> VERY BEST Ferrari! 488 Pista ピスタ
テーマ:Ωクルマ好きの交流所Ω(640)
カテゴリ:クルマ


「一番好きなフェラーリは?」、「296GTとどちらがいいですか?」
よく聞かれる質問ですが、「40数台乗り継いだクルマの中でもピスタが最高のクルマであり、一番好きなフェラーリです」と答えます。ただ、296GTBとの比較では「ピスタが富士山、296GTBがエベレスト」と例えて、「どちらもすごいでしょ?」と申し上げています。
別稿で458は初めて本格的に電子制御され、次元の違うフェラーリのパーフォーマンスカー新時代を切り開いたモデルだと説明していますが、エンジン、デュアルミッション、デフ、サスペンション、ステアリングなどの電子制御レベルはその後、味付けの違いはあるにせよ、488→F8→Pista→Roma→SF90→296GTと進化を続け、それにツインターボの低速化やモアパワーのハイブリット化が加わりました。乗り継いでいると新車価格が高騰するのも開発費の大きさから納得がいきます。この点、911の呪縛から逃れられないポルシェとは対照的です。

こうした進化の潮流を振り返ると、最高のフェラーリは1000馬力を超える四駆のSF90やガソリン車とのギャップを緩和した296GTになりそうです。そうならないのはなぜでしょう。中古車価格でもSF90はピスタより安く、オプションを入れると購入価格を下回っていますし、296GTはまだ市場に出回っていないものの購入価格並みです。
その理由は走れば、ピスタでは動悸や呼吸が激しくなってアドレナリンが分泌される人間の感性とクルマの特性が人馬一体感として多分に残っているのに対し、SF90や296GTでは曲線的なパワーの盛り上がりとピークアウトが電気モーターで巧みにカバーされ、どこまでも直線的に加速するからではないでしょうか。0→100kmはピスタ2.85秒に対し、296GTB2.9秒ですが、0→200kmではピスタ7.6秒に対し、296GTB7.3秒です。恐らく、0→300kmなら296GTBが2秒くらい優位に立つでしょう。動悸や呼吸の乱れもなく・・・・。うまく言えませんが、感覚的にはゼロ戦とジェット戦闘機の違いでしょうか。ピスタはより人間的で、458が「最後のNA」と謳われるのと同じく、「最後の官能マシン」というべきかも知れません。

また、ピスタが人間的なのは軽量なこともあり、電子制御によるトラクションコントロールが完璧な点にも出ています。ロールは殆どありません。添付写真でFISCOの第2コーナーの走行スナップがありますが、この写真を見た方は姿勢が全く傾いていないので「パレードランの写真ですか」と言われます。しかし、実は140-150km/hくらいで走行しています。運転する私は横Gに耐えるべく、頭をイン側に傾けていますし、後続のF8のリア内輪サスは若干ですが伸びています。ピスタは458に比べると制御がきめ細かくスムースですが、SF90や296GTほど全く感じないまでには至っていません。私はマネッティモードを常にRACEポジションにして走っていますが、ピスタは公道でもサーキットでも完全なグリップ走行でドリフトは一切させてくれません。カウンターステアリングでドリフトに入るきっかけを作ろうとしても制御されてしまいます。例えば、左カーブならアンダーが出そうになると電子制御デフが右ドライブシャフトへのトルク配分を高め、電子制御サスが右リアのダンパーのバネレートを高めるとともに左後輪のブレーキが効いてドライバーがカウンターを当てる前(スキッドし始める前)に姿勢を立て直します。このような制御はセンサーとECUの交信を1秒間に何と数百回レベルで行うことにより実現されているそうです。昔、F1でアイルトンセナが1秒間に6回アクセルのON/OFFを繰り返す「セナ足」と呼ばれるドラテクで称賛されていましたが、現代のフェラーリは次元が違うわけです。常にニュートラルポジションなんです。

ですから、ピスタのクラッシュ画像はユーチューブでも見られません。唯一の例外として、先日オランダで撮影車を後続に従えたピスタが張り切り過ぎたのか、激しくスキッドして草むらに突っ込んでいましたが、あれはトラクションコントロールを全てOFFにしていた(ABSのみの状態)そうで、少なくともRACEモードにしていれば、あのようなアクシデントには絶対なりません。クラッシュ画像は458や458スペチアーレに多いですが、スロットルを急激に踏み込むと電子制御の反応がまだ速くないモデルなので、パワーが一瞬制御を超えてしまい、スキッドに慌てたドライバーがカウンターを当てすぎてスピンする典型的パターンです。ステアリング操作が余計なんです。

瞬時に制御されるピスタは、4輪の荷重変化が激しく、アンダーからオーバーステアに急激に変化して緊張を強いられるポルシェ、特にGT2RSやGT3RSとは真逆の世界です。FISCOのスタンド前で同じく300km/hオーバーで走っていても、第1コーナーに突っ込むブレーキングポイントや緊張感が全く違うのです。GT2 RSやGT3 RSですとスタンドの切れ目くらいでブレーキを踏み始めますが、ピスタですと170m標識くらいまで引っ張れます。ポルシェに27年間乗りましたが、フェラーリからポルシェに戻ろうとしないのは、この安心感の違いからです。今までにポルシェやマクラーレン、アストンマーチン、ランボルギーニなどのオーナーに同乗してもらって六甲山を攻めたことがありますが、皆さん例外なく姿勢の変化がない卓越した操安性に非常に驚いていました。
ただ、安定しているとは言え、ステアリングはダイレクトでロードインプレッションをしっかりフィードバックしてくれますし、車内は野太いエキゾーストサウンドとタイヤの走行音に満たされています。電子制御は適度に効いていて「乗らされ感」は殆どないです。粗削りの458では電子制御はドヤ顔をして介入してきますし、ビックパワーのSF90や296GTでは黙って気づかれないよう、しかも確実に介入してきます。常に冷静で表情を変えない優等生みたいに・・。

ミッションの変速面で、ピスタはすでにサーキットでもAUTOのほうが速いくらいですが、キックダウンはパドルでマニュアル介入する余地が残されています。SF90や296GTではサーキットやワインディングでもパドル操作はまず不要です。8段、9段のデュアルクラッチがさらに進化しており、ブレーキの踏み加減次第で完璧に1段、ないし2段のシフトダウンを自動で行ってくれます。昔、ジャガーXKでAUTOによるキックダウンのスムースさに驚き、世界最高ではと感じたことがありますが、現代のフェラーリはその水準をよりハイスピード域で凌駕しています。
まさにフェラーリ、恐るべしです。


ピスタは以上のような優れた特性に加え、多くのフェラリスタの人気に支えられてリセールバリューがとても高い(7500万円では買えなくなりつつあります)ので、クルマというより「投資タワマン」、「走る不動産」であり、財政面でも安心感があります。

なお、リセールバリューを重視するなら、並行輸入車のほか、認定中古車でも次のような個体には手を出さないほうがいいと思います。
人情として実車を見てしまうと興奮して買い急ぎがちになりますが、高価な買い物です。冷静に選びましょう。ピスタは売り出し2週間くらいで売れるのが通常なので、売れずに残っているピスタには必ず理由があると考えることです。
フロントラゲージルームに取り付けられたオプションプレートの記載が査定対象です。あとでパーツを装着しても価値は上がりません。念入りに確認してください。

1.カーボンホイール装着車:オプションでは約270万円しますが、敷石や歩道に当たると亀裂が入って修復不能、即交換になるので入荷待ちと費用(@80万前後)が馬鹿になりません。また、普通のタイヤ交換でもディーラー以外ではBond東京・大阪くらいしかやってくれないので大きな敬遠要素になります。
新車オーダー時に鍛造ホイールを付けて予備に納車させているケースが多いので、確認してみましょう。

2.非フルカーボン仕様車:バンパー一体のリアモールがオプションで約260万円なので、カーボンを選択せずにFRP製のままになっている個体がありますが、カーボンはクリア塗装になっているのでFRP製のマットブラック塗装との違いが非常に目立ちます。あとでカーボンに交換すると板金塗装込で480万円掛かった2年前の事例を知っています。

3.ストライプ後付けの個体:純正オプションは約300万円しますが塗装表面に全く段差がないので、後付けのラッピングストライプは段差ですぐ判別できます。

4.  7年メンテナンスプログラム対象外車:正規ディーラー車の場合、マフラー、ホイール、サスペンション等の改造をしていなければ、新車購入から7年間は毎年の定期点検と、所定の時期に達した時のエアコンフィルター、エンジンオイル&フィルター、ブレーキオイル、ドライブベルト、エアーエレメントの交換が無償になります。この効果は絶大で私の場合、先日の車検では諸費用込みで僅か158,000円で済み、アウディTTクーペより安かったです。ピスタは2018年発売なので2018年モデルを買う場合、2025年の車検は7年メンテナンスが切れる最後になるので、この点も考慮して下さい。メンテナンスプログラムは「ニューパワー」という名称で年50万円ほどで延長可能です。










第2コーナーをクリア。後続のF8は僅かにロールしているが、ピスタは姿勢変化なし。

300Rの下り複合コーナーに入り、DUNLOPコーナーを目指す。











カーボン製フロントスポイラーはクラックが入っていないか、入念にチェックしたい。
なお、ポルシェGT2 RSやGT3 RSの純正フロントスポイラーは敢えてカーボンにはせず、FRPのままにして交換コストを抑えるようにしてあります。




フロントのカーボンスポイラーを折損すれば、交換にいくらかかるか?
まず3分割になっているが、単品ではオーダー取寄せできないので、上の2年前のパーツリストであるが 2と4と5の3点合計で5934ユーロになる。@160円として運賃、保険料別で95万円になる。
CORNESに照会しても、「少なくとも120万円はする」とのことだったので間違いないところだろう。




カーボン生地がクリア塗装されていない部分も含め、リアバンパー、スポイラーは全て一体のオプションなので、カーボン製かをしっかり確認する。マットブラックにペイントされているのはFRP製でリセールバリューがかなり落ちてしまうので敬遠したい。


査定対象はあくまでオプションプレートで追加パーツは評価されない。認定中古車を選ぶ場合でも口頭説明や見た目に頼らずに、このプレートでカーボンパーツやストライプがフル装備されているかを確認する。シートはレーシングバケットでMサイズ、上下アジャスター機能(ピスタは元々無)が付いている方がリセールバリューは高くなる。


BBRの1/12ミニーカーは愛車とオプションを一致させるのに苦労したが、15万円の価値はあり、オーナーが仔細にチェックしても破綻がない。