投稿日: 2021年12月26日 18:00 TEXT: 清水草一 PHOTO: フェラーリ
何もかもが美しい……は庶民の妄想!? フェラーリオーナーが語る「駄作」も多い「フェラーリのデザイン」 (1/2ページ)

この記事をまとめると
■フェラーリはそのブランド力の高さからすべてのモデルがカッコよく見える

■じつはフェラーリでも凡庸で未成熟で煩雑なスタイリングのモデルもある

■人生を賭けてフェラーリを買った本人だからこそフェラーリのスタイリングには厳しい

※あくまでも個人の見解です

フェラーリはフェラーリだからかっこいいのか?
 WEB CARTOP編集部より、素朴な疑問が届いた。「フェラーリのデザインにハズレがないのはなぜでしょう?」。

 思わず「ええっ!?」と聞き返してしまった。フェラーリのデザインにハズレがない!? ぜんぜんそんなことないじゃないか! ハズレだらけじゃないか!

 私「FF(フェラーリ・フォー)もハズレじゃないの?」



 編集部「いや、あれも逆にカッコいいように見えるんです。登場した時は”えっ?”って思いましたけど、いつのまにかカッコ良く見えてきました。フェラーリフィルターのせいでしょうか?」

 その通り。それは間違いなくフェラーリフィルターが原因だ。具体的な心理作用としては、「わざわざあんなフェラーリらしくないフェラーリを買うなんて、きっとすごいお金持ちなんだろうなぁ。スゲェなぁ」とか、「一見カッコ悪いフェラーリって、逆にツウっぽくてカッコいいよなぁ」といったものである。

 フェラーリというブランドを抜きにして、FFやそのマイナーチェンジ版であるGTC4ルッソのデザインを見たら、カッコいいと思う人は大幅に減るだろうし(そもそも少ないが)、私の絶対評価としても、あのデザインはまるでダメだ。





 FFやGTC4ルッソの場合、シューティングブレークというボディ形状そのものが、日本人の理解を超えている部分があるが、メルセデスの一連のシューティングブレークは、抵抗なく受け入れられた。それは、ルーフ形状が非常に滑らかに下がっていて、ゼイタクなロングルーフのクーペのように見えるからだ。

 しかし、FFおよびGTC4ルッソは、ルーフラインが後端近くでガクンと折れていて、明らかにステーションワゴン風。超ロングノーズの2ドアクーペとステーションワゴンの融合は水と油で、それがどうにも受け入れられない。もちろん「そこかカッコいい!」という人もいるでしょうが、世界的に売れ行きが良くなかったことから見て、かなりの少数意見だろう。





 

 

 

 

 

 

 

 

 


 550マラネロから始まる、一連のフロントエンジンV12ベルリネッタも、すべてデザイン的にはいまひとつだ。550マラネロとそのマイナーチェンジ版である575Mは、フォルムもパネル面も大味で、あの雄大なサイズを活かしきっていない




 それに続く599GTBも、サイズばかり大きくて、それを持て余してしたようなでっぷりとした造形になっている。



 F12ベルリネッタは、サイドの折れ曲がったインバースが、まったく無意味に煩雑に見える。現在の812スーパーファストは比較的引き締まっているが(サイズもやや縮小された)、サイドに斜めに鋭く跳ね上がるインバースはやはりうるさいし、リヤの造形も複雑すぎるように見える。





 V8ミッドシップ系では、308/328は大傑作だったが、348はやや豊潤さに欠け、全世界で大人気のF355も、フロントエアダム部など細かい造形に未成熟な部分が散見される。





 360モデナは非常に斬新なフォルムだったが、パネル面がたるんで締まりが足りなかった。F430はそれを細部で補おうとしたが、逆に煩雑になった。


 458イタリアは久しぶりの傑作だったが、488はその改悪版に過ぎず、F8トリブートも同様


 続く296GTBは、全体に非常にシンプルで滑らかになり、久しぶりのヒット作だが、こうして見ると、フェラーリにもデザインを失敗したモデルはたくさんあるし、逆に成功しているモデルのほうが少ない


 私がフェラーリのデザインに厳しいのは、フェラーリを崇拝するフェラーリオーナー(現在の愛車は328GTS)だからで、同時にフェラーリは世界一美しくなくてはいけないと思っているからだ。他人事じゃないから、欠点が思い切り目についてしまう。

 フェラーリを買わない人は、FFを見て「あんなフェラーリに乗るなんてカッコイイ!」と思ったりするのでしょうが、人生賭けて買うとなると、なかなかそうはいきません。