厚生労働省生活習慣病対策室が、生活習慣の改善をうながすための「コミュニケーションの手引き 」を出しました。


それを見て、疑問に感じた、有識者数名からご連絡いただき、私の意見を求められたので、ここに書きたいと思います。



まず、良い点から・・・


1. 見た目が、とてもステキで、見やすい。


2. 行動変容への準備期・実行期だけに焦点を当て、その段階にいる人の行動分析データを載せているので、実際に使用する際、便利。


3. 各テーマについての分布を一目でわかるような形で紹介しているので、全体像をザッと把握しやすい。




一方、「私だったら、こう改善するだろう」と思った改善点は・・・



1. 心理的な多様性に対応できるように理論の充実化をはかる


この手引きは、国が保健専門職に使用してもらいたくてつくった手引きです。


つまり、ターゲットは、保健専門職。



私は、保健専門職の方々に、この8年間、ヘルスコミュニケーション の研修をさせていただき、


1回の研修あたり50名から100名くらいの方々とお会いするので、


重複されている自治体組織などを省いて、回数を少なめに見積もったとしても、


1万数千人以上の専門職の方々と接してきました。



その経験上感じていることは、


保健専門職の方々は、ポイントをおさえれば、心理学や行動科学の、複数の理論を自分なりに組み合わせ、


過去の経験をふまえた、創造的な応用ができるということ。



私にもしこの手引きを改善する機会が与えられるのならば、「これだけは覚えておきたいポイント」を


2W1H



行動変容のステージモデル


だけに焦点を絞るのではなく、さらに、理論的に充実させます。



そうすることで、この手引きを使った専門職の方々が、国民の「心理的な多様性」に、少しでも対応しやすくなると考えるからです。



心理的な多様性に対応できて初めて、生活習慣の改善を促すことができるのです。



本論とは、ズレますが、私だったら、2W1HとPlace と Timing と分けた書き方をせずに、


Place と Timing は、Where と Place という形にし、Why要素も紹介し、既存の5W1Hとして紹介するでしょう。



そうすると、少しでもコミュニケーションをかじられた方なら、「あっ、知ってる」と親しみを感じ、嬉しくなるはずだからです。




2. 難しいといわれている無関心期・関心期への対応について加筆する



普段からよい生活習慣を心がけている準備期・実行期の方は、保健指導をする際、もっとも楽な人といわれています。



「保健指導、やってはいるのだけれど、相手の関心レベルが低いから、うまくいかない」

と悩んでいる保健専門職の方々は多いので、


無関心期・関心期への対応アドバイスこそがほしいところ。



そして、無関心期・関心期への対応アドバイスを載せる際には、1. で前述したとおり、心理的な多様性に対応できるような理論の充実化をはかる必要があるのです。




3.内容・タイトルをWHOの定義する「ヘルスコミュニケーション」に変える



既存の内容を1. や 2. の内容へと修正したら、まさに、WHO(世界保健機関)が定義した、「ヘルスコミュニケーション」になります。



日本公衆衛生学会は、今年から、ヘルスコミュニケーションを、「公衆衛生の専門職に必要な能力」として、入れようとしていますし、


昨年は、アジア太平洋ヘルスプロモーション・健康教育学会で、日本で初めて、ヘルスコミュニケーションのシンポジウム(座長は、山口大学の福田教授と私)が開催されたという時代の流れのなか、


ヘルスコミュニケーションの内容とタイトルにしなかった理由がわかりません。




・・・他にも、「私だったらこうする」という点は、いろいろあるのですが、長くなってきましたので、今回は、この辺で終わります。



次に、ヘルスコミュニケーションの関係で何か作成されるときには、声をかけてもらいたいと心から願いました。