本ブログでは、昨年4月から10月にかけて「エネルギー環境戦略を考える」という副題を配した記事を6本UPしている。
興味深いニュースがあったので、久しぶりに「そのVII」をUPする。↓
<抜粋>
" 光合成は植物が太陽光を使って水とCO2から有機物を作る。人工光合成はこの光合成を人工的に行う。太陽光を使って水から水素を取り出し、その水素とCO2を反応させてプラスチック原料など産業用に使える物質を作る。人工光合成は国内の企業や研究機関が有力特許を持ち、日本が世界をリードする技術として注目されている。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が今後10年間で約300億円の支援を決めた。前身の10年間のプロジェクトから支援額を倍増させる。三菱ケミやINPEX、三井化学などから成る「人工光合成化学プロセス技術研究組合」や東大などが研究開発の主体となる。今回からトヨタや日本製鉄などの異業種も多く参画し、知見を持ち寄って「オールジャパン」で開発する。
水を水素と酸素に分解する光触媒シートを開発。・・・実用化が進めば、NEDOは50年に国内でCO2排出量を約1300万トン削減できるとはじく。
計画では、水素への変換効率を10%に引き上げることや、屋外で数~100ヘクタール規模のパネルを使って水素製造を実証することを目指す。・・・水素とCO2から高効率でプラ原料を作る触媒の開発などにも取り組む。
30年までに水素の製造コストで1キログラムあたり240円を目指す。原油価格にもよるが、実現すれば天然ガスから分離した水素のコストと同等以下になり、政府の30年までの目標である330円を下回る。50年までには170円以下へ引き下げる計画だ。"
<抜粋終わり>
このプロジェクトのすごいところは、ただCO2を削減するだけではなく、太陽光により電気を介さずに(太陽光発電+電気分解ではなく)光触媒で水を分解して水素を得ていることだ。
さらに、得られた水素とCO2から、ここでも触媒を使ってプラ原料となる有機物「ギ酸」を合成していることだ。
この一連の工程で、有機原料は一切使われておらず、エネルギー源は全て太陽光だ。
まず、構造の単純な無機物からの人工有機物合成は、すでに1828年に成功している。
しかし、工業的には採算が取れず、動植物由来の石油や石炭からの合成やバイオ技術で造られているのが現状だ。
また水素は、次世代エネルギーとして注目されているが、水の電気分解で造るのなら電気をそのまま使えばいい理屈で、電池に代わる大容量のエネルギー貯蔵手段(燃料電池で電気に戻せる)としての意味合いが大きかった。
水素は水の電解より石炭からの方が安価に製造できるが、石炭は有限な化石燃料であり、加熱も必要だ。↓
これに対し、光触媒を用いた太陽光エネルギーによる水の分解ならゼロカーボンかつ100%自然エネルギーでの製造だ。
もちろん、太陽光で発電した電気で水を分解するより高い収率で水素が得られなければ、光触媒を用いる意味はない。
これまで、光触媒による水分解は高エネルギーの紫外光でないと難しかったが、自然の太陽光中の紫外成分はごくわずかであり、それがこの方法の最大の課題であった。
この課題に突破口を開いたのがこれだ。↓
水素を作る工程も、得られた水素からギ酸を作る工程も、共に触媒の性能向上がキーポイントになるのかと思う。
同一面積のところに植林するよりも多くのCO2を吸収でき、石油/石炭を使わずにプラスチックが製造できれば一石二鳥である。
また、これが実現する頃にはプラゴミの処理問題も解決していることだろう。
これは、核のゴミほど難しい問題ではないはずだ。
このように良いことずくめのような話だが、触媒の原材料としては通常レアメタル(希少金属)が用いられるので、その確保が課題になるかもしれない。

