先週の女子プロゴルフトーナメントの舞台となったクイーンズヒルゴルフ倶楽部に対する興趣は横峯さくらプロの欠場で半減したが、それでもわが大学の部OB会で11月に計画しているゴルフツアーの会場候補の筆頭だった。

 

 通算十数回を数えるOB会ツアー。これまで北海道、宮城、新潟、東京、埼玉、千葉、滋賀、長崎等で開催してきたが今回、同期にして長崎在住の生涯アスリート(シニア野球、ゴルフ、マラソン)K君と私が幹事を務めている。K君とはプライベートでもパサージュ琴海、若木、志摩シーサイド、島津等九州各地のコースを回ったことがあったが、このクイーンズヒルを回りたいというのは、常時80そこそこで回るK君にしてみればトーナメントコース攻略意欲ゆえだったろう。一方私はと言えば、高低差が少なくフェアウェーがゆったりして見通しのいい丘陵コースが好みー若木がそうだったーという、下手相応の単純な発想に過ぎなかった。同床異夢ではあるが期ぜずして意見の一致を見、他の幾つかの候補を交えて具体化に向け取り掛かったのだった。

 ところがひと月を経てもコースは決まっていない。正式な予約開始が大体三カ月前からということもあるが、アプローチしたクイーンズが音無しであるのを含め、福岡の有名どころゴルフ場の想像以上の敷居の高さが此方の意気込みと思惑を阻んでいるのだ。

 

 福岡市近郊の名門ゴルフコースと言えば福岡カンツリー和白、古賀、芥屋、ザ・クラシックあたり。プロトーナメントの開催コースとしても知られ、厳格な会員制を維持している。我々も習志野、浜野、ザ・CCジャパン、セブンハンドレッド、ファイブハンドレッド、日本カントリーなど名門・一流と言われるコースに立ったことはあったが、関東首都圏とは訳が違うだろうということで立場をわきまえ、当初からこれらは度外視。これらが歴史と伝統の名門とするなら、比較的後発で経営問題もあったがコース・設備・サービスの充実と高級感で人気のクイーンズヒルを第一候補としたのである。

 二日で二コースが恒例なので、我々はクイーンズヒルとともに同じ福岡市西部のRゴルフ倶楽部を有力候補としアプローチを開始した。

 

 Rは福岡市中心部から車で40分程度の立地で、スケール感に富む丘陵林間コース。経営の変遷はあったようだが、メンバーシップの明確な上級コースとして評価が高い。

 WEB予約可能だがそのWEB会員登録の方途がHPにないので、メールでコンタクト。その結果、WEB会員募集は既に停止していること、初めて来場の場合平日ビジター予約もメンバーの紹介を要することが判明した。隣国辺りからのツアー客がプレーしようとする場合メンバー同伴が必要なことも。

 自分のような者でも或いは誰しも、フォアの声もなく時に確信犯的に平気で打ち込まれたくはないし、隣のコースから挨拶もなしに闖入されたくないし、グリーン上のディボットは直しておいてほしいし、プレーファストを心掛けてもらいたい。だからコース側が誰でも彼でもプレー出来るわけではありませんと客層の質的向上を目指して方策を講ずるのは、結果的に一見さんお断りとなるにせよ、メンバーを大事にするという観点からも方向性として理解出来る。10日前からキャンセルチャージをきっちり取るというのもその一環と言えるのだろう。一方では〇〇まつりとか○○フェアのような集客活動もやっているが、そこもメンバーを中心にビジターの輪を広げていくというスタンスなのだろう。

 そんなようなことがかなり迅速なメールのやり取りで理解出来たので、我々としてもさしたる齟齬もなく断念の結論に至った。私はかつて福岡市内で暮らしたことが有り、またかつての仕事先の出先が福岡にある。K君も福岡との縁は深い。だから、メンバーの紹介という見方によってはファジーな条件に搦め手から食い込む方途も考えられなくはなかったが、そんな時間的余裕もなかった。

 ただここで思いが至ったのは、福岡の気質・土地柄ということだった。

 私は福岡で小・中学の5年間を過ごしたに過ぎないが、その後も何かとつながりはあった。「何を考えているのか分からない」とは対極のいろいろはっきりした、時として矛盾するような裏腹な言動や意識に直面した。完全な私見・独断に過ぎないが一種の排他性・モンロー主義、独立心、義理堅さ、単純、気安さ、率直、手荒、硬派、浮薄、祭り好き、流行好き―そんなカオスで活発な賑やかさの中で、無法や理不尽に簡単に尻尾を巻くような市民でもないし、今で言えば所謂カスハラに首をすくめるような商売人は少ないように思える。一例を挙げるなら、電力業界を仕事場にしてきた自分が感じた九州電力の印象は、電力会社共通の慇懃さではなく、公益事業としては一種人間的とも思える強面さだった。やることはやるが、言うことは言うということだろう。

 ゴルフ場経営においても、メンバーは概ねうるさ型に違いなかろうし、それが全国的にも厳格な福岡のメンバーシップ重視型のコース経営に反映しているのだろうが、ここでもご無理ご尤もの迎合的な姿勢は薄いと思われる。例えばコースへの口コミに対するコース側のアンサーにもその辺が滲み出ている。

 

 という訳で、なかなか難しいところのある福岡のゴルフ場選び。で、クイーンズヒルである。

 此処はもう一段ステイタスを上げた印象。実は数年前に民事再生を経て会社更生法の適用を受けた謂わば再建途上のゴルフ場なのだが、コースに対する高い評価は揺るぐことなく、嵩むコストにも拘らず予約が取り辛い。セルフプレーはなし。基本歩き・手引きで回る設定は名門仕様(カートはオプション予約)でもあるが、高低差8㍍というコース仕様に即している。

 WEB予約のための会員登録は可能で、私も取り急ぎ登録。11月のスタート予約に向け問い合わせページから質問を送った。オンライン予約ページには7月・8月分の空き枠状況表示はあるものの、9月・10月については「予約可能なプランが1件もない」との表示なので、「これは実際にソルド・アウトということなのか」「だとすれば7月中に10月一杯の予約を受け付けていることになるが、これは通例の3カ月前からの受け付けではなくトップシーズン向けの特別な予約体制なのか」「であれば11月の予約を取るにはいつごろどう動けばよいのか」という内容だった。

 7月17日に送信。ただちに「お問い合わせを受け付けました」とリプライがあったが、これは自動送信。それから10日経っても、トーナメント開催で忙しかったのだろうがそれが終わってからでも1週間、何の返信もない。これは手違いなのか、無視なのか。「表記してあるとおりですよ」「11月もそう。トップシーズンにビジター予約なんて無理ですよ。メンバー優先が当たり前でしょう。紹介者があれば別ですが」ということなのか?

 そんな詮索はともかくとして、また幹事として徒労をかさねてしまったという此方の事情は置いて、公式ページから送った質問になしのつぶてというのは些かならず非常識ではないか。またまた詮索になるが、メンバー重視・ビジターは付け足しという経営方策の分かりやすい発露なのか。

 とまあそんなような経緯で、候補筆頭を業腹のままリストから外さざるを得なくなったことは誠に残念なことだったのである。