夏の風物詩といえば怪談もまたその一つだ。
病院や学校には、必ずといっていいほど怪談が存在する。
うちの病院にももちろんある。
霊感は持っていないが、不思議な出来事はいくつか体験している。
恐怖体験という大げさなものではないが、すこし書いてみる。
その日は寝苦しい夜だった。
僕は寝返りを打ちたくてナースコールを押した。
夜はナースが三人しかいない。
たった三人で四十人の患者をみなくてはいけないので、ナースコールを押してもすぐにはこれない時もある。
その時もなかなか来なかったが、「どこかの部屋に行っているんだろう」と我慢していた。
しばらくすると部屋に近づく足音が聞こえた。
しかしいつもと違う足音だ。
普通なら早足でやってくるのに、ゆっくりとした、まるで徘徊するような足音なのだ。
そして廊下がわのすりガラス越しに白衣の影が見えた。
「やっときたか」と心の中で呟いた。
しかし、一向に部屋に入ってこない。
いい加減、我慢の限界にきていた僕は「何をふざけているんだ」とばかりにナースコールを連打した。
するとナースステーションからいつもの足音が聞こえてきた。
ふと気づくとすりガラス越しの白衣の影が消えていた。
僕は、入ってきたナースに訊いてみた。
「だれかさっき来ていたやんな」
「いいえ、来ていませんよ」
「うそやろ」
「いや、だって三人ともナースステーションにいましたし、三十分ほどナースコールは鳴っていませんよ」
僕は耳を疑った。
ナースは新人の若い子で、とても嘘をつくようには見えなかった。
寝返りを手伝ってもらった後、ナースは不思議そうな顔をしていった。
「なんか変なんですよ。患者さん、みんな同じことを訊くんですよ」と。
あの足音と白衣の影は一体なんだったのか・・・。
暑いお盆の夜の出来事だった。
- 結城 瞳
- 結城瞳の心霊写真が語る怖い話