我が家には、今、国立大学を目指し、まさに受験の真っ只中にいる高校三年生の長女がいる。

彼女の進路は、推薦や総合型選抜といった道ではなく、あくまで「一般入試、本番一発勝負」。
その潔い決意を聞くたびに、親としては頼もしいと思う半面、その重みに胸が締め付けられるような、複雑な思いが交錯する。
思えば、彼女の道のりは少しばかり特別だった。
地元の小学校から私立中学校へ進んだ彼女は、そのままエスカレーター式に中高一貫校へ進むのが一般的な流れだったはず。
けれど、諸々の事情が重なり、私たちは話し合いの末、中学卒業時にあえて公立高校を受験するという選択をした。
「尻叩き型」から「刺激吸収型」へ。娘が見つけた受験の原動力
あの時の彼女の気持ちを思うと、今でも胸がキュッとなる。新しい環境に飛び込む不安と期待。
そして、中学受験も高校受験も経験した彼女は、正直言って、その頃は私や塾の先生が「尻を叩かなきゃ全然やらない」タイプだった。
中学受験の時など、本人自らが「中高一貫校に行きたい」と言い出したのに、なかなか勉強に身が入らず、なんでこんなに意欲がないのだろう、と悶々とした日々を送ったこともあった。
それがどうだろう。公立高校に進学してからの娘は、まるで別人のように変わったのだ。
彼女が通う高校は進学校で、中でも娘は国立大受験コースに在籍している。
周りのクラスメイトも、ほとんどが四年制大学への進学を目指す仲間たちだ。
予備校にも通っているけれど、主軸は学校のクラスメイトたちの「やる気」を肌で感じ、それが自身のモチベーションに繋がっているらしい。
私自身は、受験生の頃は周りをあまり気にしない「孤軍奮闘型」だったから、娘のように「周りの刺激を常に受けてやる気を出す」タイプもいるのだなぁと、新鮮な驚きを感じている。
公立高校で巡り会えたこの環境が、彼女の内なるエンジンを動かし始めたのだと、今は確信している。
「スライディング土下座」で掴んだ、準1級の切符

そんな環境の中で、彼女の「国立大学へ行きたい」という目標は揺るがなかった。
特に、大の苦手の英語の対策には相当苦戦、力を入れていた。
先日、受験した英検の二次試験の結果が届き、見事準1級に合格したという朗報が飛び込んできた。
2級取得すると一部の大学で英語の試験が8割換算になると聞いていたから、それだけでも十分なアドバンテージだと喜んでいたのに、まさか準1級とは。
これは国立大学の一般入試で、大きな武器になるに違いない。多くの大学で、準1級は英語の試験の満点換算、あるいはそれに近い高得点での換算対象となる。これで、苦手科目に、より時間を割くことができる。
しかし、この準1級合格の裏には、親も知らない、いや、聞かされて思わず笑ってしまった(そして感動した)エピソードがあった。
彼女曰く、「先生は忙しいから、普通に頼んでも無理だろうと思ってさ、英語の先生にスライディング土下座して毎日教えてもらったんだ」と。
「スライディング土下座」がどこまで真実かは定かではないが、先生に毎日個別指導をお願いし、放課後や休日に食らいついていたのは確かなようだ。
運動部の顧問が外で指導しているときにテキストを持って聞きに行ったりなどは日常茶飯事らしい。
娘の目標に対する情熱が先生の心を動かし、先生もまた、生徒の夢を全力で応援してくださったのだろう。
公立高校だから「手厚くない」なんてイメージは、もはや過去のものだと、彼女の話を聞いていると思う。
私が学生時代は良くいえば放任主義だった。私立のような併走は望めないだろうと思っていたが、進学実績を残すためだろう、最近の公立高校は私立に負けないくらいアツイ。
志を同じくする友、献身的な先生。公立高校がくれる「もう一つの手厚さ」
英語の先生だけではない。我が娘が通う公立高校の先生方は、本当に熱心だ。
土日も返上して受験対策をしてくださっていて、今も夏期講習と称して、希望者に向けて共通テスト対策を各教科で実施してくれている。
多様な生徒たちが集まる公立高校で、こうした手厚いサポートを受けられるのは、親として本当にありがたい。
娘も「みんな真剣だから、すごくいい刺激になるんだ」と、目を輝かせている。
周りの友人が頑張っている姿は、何よりのモチベーションになるだろう。
私立の中高一貫校に進まなかった、あの時の選択。諸事情はあったにせよ、それが娘にとって、今のベストな環境を作り出したのだと、今は確信している。
志を同じくする友人たち、そして献身的な先生方に囲まれて、娘は最後の追い込みをかけている。
国立大学の一般入試は、本当に一発勝負だ。
これまで培ってきた全ての力を、あの数時間に凝縮する。親としては、見守ることしかできない。
この夏を乗り越え、娘が目標とする学びの場へと辿り着けるよう、心から願うばかりだ。