長年の友人が、夫を亡くして2年。
深い喪失感から、思考も停止し、何に対してもやる気をなくしていた。
特に私を心配させたのは、彼女が「子どもがいないから、遺族年金はもらえない」と完全に諦めきっていたことだ。
「奥さまはお子さんがいらっしゃらないので遺族年金は貰えないと思いますよ」。
死亡保険の請求で、そう保険会社に言われたらしい。
彼女はそれを鵜呑みにし、自分で調べることもしなかった。
絶望の淵にいる時、人は何かを深く考える力を失うものだ。
信頼する生命保険の営業マンの言葉なら、なおさら疑いもしないだろう。
だが、生命保険の営業に関しての知識と年金の知識はイコールではない。
彼女の認識を聞いていて違和感しかないのだ。
正直、友人として、年金やプライベートなお金のことに踏み込むのはかなり抵抗があった。
デリケートな問題だし、口出しして嫌がられるかもしれない。
でも、このまま彼女が、本来受け取れるはずの権利を放棄しているのを見るにみかねた。
「自動徴収なのに自動支給じゃない」年金制度の壁
日本の年金制度は、国民全員から保険料が自動的に徴収される。
だが、いざという時の「支給」は自動ではない。
こちらから請求しない限り、受け取れないのだ。
このギャップが、今回のように、知識がない人や、精神的に落ち込んでいる人を苦しめる大きな要因だと痛感した。
私は、昔、自分の家計管理や老後資金のために独学でファイナンシャルプランナー(FP)の資格を取った。
FPで生計を立てているわけではないが、その知識が、まさにこの状況で活かせるかもしれないと思った。
「子どもがいないと無理」は、なぜ誤解なのか?
友人に声をかけ、まずは、彼女の誤解を解くことから始めた。
多くの人が混同しがちなのが、遺族年金の2つの種類だ。
遺族基礎年金:国民年金から支給され、これは確かに「子がいる配偶者」が主な対象となる。ここだけ聞けば、「子どもがいないなら無理」と思うのも無理はない。
遺族厚生年金:しかし、夫が会社員などで厚生年金に加入していた場合、話は全く異なる。「子どもがいなくても、妻が受給できる可能性が非常に高い」のだ。特に、妻が夫の死亡時に30歳以上であれば、年齢制限なく一生涯受給できる。
友人の夫はサラリーマンで厚生年金に加入していた。
そして、友人は45歳。まさに遺族厚生年金の対象だったのだ。この事実を伝えた時、彼女の顔に、微かな希望の光が差すのを見た。
喪失感からやる気を失くしている彼女にとって、年金請求の手続きは、あまりにも大きなハードルだっただろう。
私は、彼女に寄り添い、手続きの最初から最後まで、できる限りのサポートを続けた。
書類の書き方から、年金事務所とのやり取りまで、一つ一つクリアしていくたびに、彼女の表情は少しずつ和らいでいった。
そして先日、ついに嬉しい知らせが届いたのだ!
来月から遺族年金の支給が決定!
さらに、これまでの2年間の未支給分もすべて遡って支給されることになった。彼女は、本当に心から安堵していた。
今回の経験で、自分のために学んだ知識が、まさかこれほどまでに誰かの人生を救う力になるとは思わなかった。
「自動徴収なのに自動支給じゃない」という年金制度の特性は、今回のように、知らなければ損をする人を多く生み出す可能性がある。
だからこそ、私たち一人ひとりが、正しい知識を身につけ、そして必要としている人に手を差し伸べることが大切だ。
私の小さな一歩が、友人の未来を照らす光となったこと。これほど嬉しいことはない。


