家の中で振る舞う夫。
彼の頭の中には
自分の父親の会社に転職する
サクセスストーリーで
いっぱいのようだった。
義父の会社は
零細企業で人事の入れ替わりは激しく
いつも人手不足なのに
【〇日以内に返事をして
入社試験を受けなければ
他の人がすでに応募しているから
この話は立ち消える】
と訳のわからない
期限付き条件を提示されたらしい。
そのくせ、入社日は
今の職場のカタがついてからで
いつでも大丈夫だと言う。
夫の勤務していた会社は
上場しているベンチャー企業だった。
弱肉強食の世界というか
成果主義なので
常に技術を磨いていなければならない。
多分、夫の性格的に
それらが負担だったのだろう。
夢ばかりは描くが実力が到達しない
よくいるタイプ。
男版のお局様と形容できる。
職場のアラを探しては
上司の無能さを批判するが、
自分が上り詰めて
社内改革を図ろうとかは
到底考えない。
隙あらば転職したいタイプなので
義父の会社に行けば
自分は父親の右腕として
有能に働けると勘違いしはじめていた。
「転職するから」
そう切り出した夫に
私はふざけるなと思った。
「何回転職したら気が済むの？
どんな職場に行っても
経営のアラばかりに目が行って
あれがおかしい、これが駄目だって
言って何度も転職してるよね。
今の職場だって、
ベンチャーだけど安定性がある。
右肩上がりで優良企業。
経営理念もまともだとか
自分で勝手に探して来て
転職してまだ一年半だよ？
入社して日も浅いのに
会社の全てを知り尽くしているかのように批判してるけど、そんなの
どこにいっても通用しないよ」
後出しジャンケン大王の夫は
内緒で就職試験を受け、
内定が出てから私に
「転職するから」と、今の職場に
入ったのだ
そのときも私は猛反対した
当時も
あれが気に入らない
これが気に入らない
自分ほど有能な人間が
正当な評価をされないと
散々、愚痴り倒し転職したのだ
何度転職しても
理由は変わらない。
若くもないのだし、
地に足を付けて仕事をしていけば良いのに
自分を正当に評価してくれる
場所があると夢を追うにもほどがある。
続く