「手術には大きく2種類あって、前方法(前方除圧固定術)と後方法(脊柱管拡大術)がありますが、あなたの場合は後ろからは無理なので前方法になるでしょう。
首の前から、喉の所からメスを入れ、チタンをはめ込み、、、〜〜〜。。。
その手術しても、今レントゲン上で脊髄にこれだけ白く傷がついちゃってると
完治、完全元通りにと言うのは難しいかも知れない」





ちょっ、ちょっと待ってください。

たしかに全身痺れてるんだけど、喋れるし痛い訳じゃない、喉は悪くないんですよ。
その上手術しても治るかわからないってどーゆー事ですか?

それに、俺の仕事は声を扱う仕事なんですけど。。。



「じゃあなんでここまで我慢してほっといたの!?
さすがに前兆というか、身体から信号出てたでしょう?」

「手術後、最初は違和感や声がかすれたりもありますが、3ヶ月〜半年ほどで日常的、普段通りの生活は送れるでしょう。ただ、大声を出したりは術前と全く同じとまではいかないかもしれません。
ごく稀にですが、かすれ声がそのまま治らないという患者さんもいます。
あなたのような声、喉を職業にしてる方に前方法で手術したことは無いので正直わかりません。

手術をしなければ手足や身体が回復していくことはまず無いですし、また転んだりして首ぶつけたり何かあった時は本当に歩けなくなりますよ。
そうなってからじゃ手術も出来なくなります。」



適当に大丈夫!大丈夫!って言うような先生じゃなくてよかった。
けどこれって、、、

日常生活か声、どっちを取るか選べって事?


しかも手術しても完治は難しいって何だよそれ。

どーすりゃいいんだよ
そんな可能性にかけて、何も悪くない商売道具でもある声帯にメスを入れなきゃならないのか。
でも手術しなかったら回復の見込みは無し。それどころか悪化する可能性すらあるのか
これ以上生活に支障出てきたらヤバい。
本当に1人では生きれない、本気で介護が必要な生活になってしまう。

とりあえず、回復の可能性がある方法事体が今のところ手術しかない
ここまででも20件以上色んな治療院、病院を試したが、うんともすんとも良くなる気配、変化すらない。

手術をかわしながら治療していくという選択肢もない、迷ってたって悪化させるリスクが高まるだけだ。
もう手術しかないのかも。


そう思った俺は、いちるの望みにかけ、先生と入院日、手術日程を話し合った。
約1ヶ月後に入院、手術の予定を入れてもらった。


その日が来るまでは、今までに引き続き色んな治療院に通い、何とかならないか、最後の悪あがきのごとく手当たり次第に試した。
とは言っても、色んな種類の治療法受けたがどれも2〜3日は様子を見る。
変化がなければすぐ違う治療、2〜3日に1回何かしらの治療を受けていた感じだ。

そんな時に耳に入ってきた1つの最新の治療法があった。

レーザー治療

調べてみると、最新機器のレーザー(長さ20cmくらいで、爪楊枝を少し太くした感じ)を患部近くから刺し、体内で直接焼いて削る。というものでメスを使わないらしい。

腰へのレーザー治療は日本で何件か出来るとこがあるらしい。
が、俺は首。
日本で今、首にレーザー治療を施せるのは銀座のみ。
そしてその治療法に保険は効かない。

どうせとんでもない金額なんだろう?と、問い合わせてみたら案の定、を超えたビックリ。
詳細は診断しないと何とも言えないが、10〜15分のレーザー照射 1箇所につき、軽く100うん十万円。


それを聞いて、とりあえずレーザーの事は頭の片隅に置き、色んな方々から数え切れないほど紹介してもらったオススメの先生や、病院へまた試しに行く。
どこを試すか迷って、直感で選ばなきゃいけないほど、何十件と候補があって困りもした。
そこへ行くまでがめちゃくちゃ辛いんだが、何とか変化が起こる事を信じて、手当たり次第に色んな方法を試した。

入院、手術を1ヶ月後に控えたある日、変化が起こった。
でもそれはずっと求めていた変化とはまるで違った。

少し無理をしながらも、遠かろうが頑張って色んな場所へ行った。
その無理が祟っての事だろう。





寝てる間に何かもう1つスイッチが入ってしまったのだろうか。

朝眼が覚める前、目を開く5秒前くらいから嫌な感じと、異常な寝汗をかいてるのに気づいた。



ハア、ハア、く、苦しい、、、

あ、ヤバい。

これはなんか相当ヤバい感じだ。


絶対身体が更におかしくなってる気がする。。。







起きるのが、目を開けるのが怖い。






そーっと開けるといつも通りの部屋の天井が。




こんな天井高かったっけ?








とりあえず起き上がろうと、ふと身体を数cm動かした時



ギュイィィィーーーーーーーーーン‼︎‼︎


身体の中芯にある、大きな鐘を鳴らされたような感じで全身に激痛が走り、力が抜けた。
起きあがるどころか、寝返ることすら出来ずに元の仰向けの状態に戻った。


無気力になりながら見つめる天井の色と同じように、頭の中も真っ白になった。