学生のときだったと思う。

その日は通っていた学校の創立記念日で、母が駅前にお昼を食べに連れて行ってくれた。


私は3人きょうだいのまんなかで、幼い頃あまり母にかまってもらっていなかったらしい

(私にとっては記憶もないような頃なのだが、母は今でもそれを気にしているふしがある)。

あれはそんな母の気遣いだったのだと今になって理解できるが、当時の私にとって

平日に堂々と出かけるのは、嬉しいというより恥ずかしい気持ちだったのを覚えている。


私が選んだファミリーレストランでは、母の知り合いが働いていた。

初めて会うその女性に笑顔で挨拶しながら、私の浮き立っていた心は沈んでいった。

平日にこんなところにいるなんて、不登校だと思われてたらどうしよう。

母はそんな私の気持ちなど全く気にする様子もなくメニューを選んでいる。


すると、ふさふさとした白髪まじりの髪をひとつにまとめたその女性は、

実にまっすぐに、ためらいなく、挨拶の続きのようにこう尋ねた。

「今日はお休み?」


「創立記念日なんです」

答えた私の顔には安堵の表情が浮かんでいたに違いない。



そのとき飲んだわかめスープは、離乳食みたいな味がした。