小説指原莉乃第十五章リライト ~ 留美姉のアシストをさしこが見事に決めて菊地凛子完全終了 | 散り急ぐ桜の花びらたち~The story of AKB.Keyaki.Nogizaka

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小説家を目指しています。ゆいぱる推し 京都地元大好き 鴨川のせせらぎと清水寺の鐘の音の聞こえるところに住んでいます。


こんにちわマナです


4月8日はゆきりんデビュー17周年の記念の日でした

秋元グループではおそらく前人未到の最長記録

長らくアイドル道を全うするという点に置いては

後にも先にも柏木由紀を越えるアイドルはもう出てこないでしょうね


そんなゆきりんともしAKBに入っていれば5期で同期の日刊スポーツAKB番記者、留美姉こと有働留美

革ジャンにホットパンツが正装の彼女はこのゆきりんのイメージに近い






有働留美 23歳

京都市出身 京都大学卒 日刊スポーツAKB48担当記者 中学生の時、母親に連れられて行ったAKB48の握手会で大島優子と運命的な出会いをする。

「留美ちゃん待ってるからね」 そんな優子の言葉だけを頼りにAKB一色の青春時代を過ごす。父親の猛反対に遭うものの、一回限りを条件に高1の春AKB第五期のオーディションを受験。最終面接までいくも、無念の病欠で不合格。入っていればゆきりんと同期。

 

「私が入ればAKBは十年は安泰だと思います」

彼女が一次面接で放った言葉を後に人づてに聞いた秋元康はこういったという。

「なんでその子を取らなかったんだ。言うことの勇気、言えることの自信、自分の将来への覚悟、それが全部その言葉の中につまってるというのに。」




今回はこんな愛すべきゆきりんと同期の留美姉が独裁マネジャー菊地凛子からAKBを救うというそんなおスカッとジャパンなお話





      


           𓂃𓈒𓂂𓏲☆.・𓂃𓈒𓂂𓏲☆.・



 


 

 

「とにかくさ、あんたは由依と連絡とりあって。

わたしは動けるところは動いてみるからさ」

 

有働瑠美はさや姉の言葉を待たずに電話を切った。

菊地凛子、あいさつ程度しか面識はない。けれど聞こえてくる彼女の噂は受け入れがたいものばかりだった。

 

上昇志向を絵に描いたような女、力のあるものしか認めない、有無を言わさないメンバーへの圧力。

「一時代前のマネージメントの世界にいたんだけどね、ああいうのは」

AKB劇場総支配人茅野忍の言葉が彼女のすべてを言い表していた。

 

「メンバーの私生活を逐一チェックできるシステムを作ろうとしている」

つい先日の由依からのメールで私はすでに動いていた。菊地凛子と特定して

動き始めた訳ではなかったけど、調べ始めると彼女の周辺からは耳を疑うような情報が次々と入ってきた。

 

「そんなもん記事にできる訳がないだろ、有働。文春にでも売ってこい」

「えっ、いいんですか」

「バカ、冗談だよ」

ただ、よく引き入れたもんだよな、こんな女を、秋元康も、そんなデスクの言葉に私も大きく頷いた。

 

そのなかで、どうしても気になる情報が一つあった。それだけはデスクにも言えない。何故なら、それはAKBの在りようにかかわる事だから。

そんな時にかかってきた指原莉乃からの電話、有働はなんの迷いもなくそのことをさしこに告げた。

 

 





2016年7月26日、

記者会見を一時間後に控えた菊地凛子の控室,

出席する横山由依とぱるる、そして島田晴香と中村麻里子の4人が呼ばれていた。

 

「第三者委員会?AKBを自浄する?どういうことですか、凛子さん」

 

「その言葉どおりの意味よ、総監督」

 

「私たちには私たちメンバーでしかできないことがあるし、すべてを運営が仕切らない、それがAKB48の大前提。それはわかって貰ってますよね?」

 

「もちろん」

 

「じゃあ、なんで・・・」

 

「じゃあ、なんで・・・?。それはあなたたちの胸に聞いた方がいいんじゃないの。ねえ、ぱるる」

ぱるるの顔から血の気が引く。色白の肌が妖しい陰を帯びていく。

菊地凛子を睨むその目は自分の心に入ることを決して認めない時のぱるるのトカゲの眼。

 

「誰にでもそんな目をするの、島崎遥香」

 

「・・・」

 

「あんたもそろそろぱるるをやめたらどうなの。辛いことだらけだったんでしょ、ぱるるなんて。そろそろおとなになって風向きかえないとね」

ぱるるの鼓動が早くなる。ぱるるの言葉は人の心に直に届く、優しさも、そして憎しみも。

 

「どうしてよ」

 

「うん?」

 

「どうして、あんたがここにいるかって聞いてんのよ。

なんで私たちの事を何にも知らないあんたが、わかろうともしない、あんたが

ここにいんのよ!」

 

「やめな、ぱる」

止めに入る島田の声を手のひらで制する菊地凛子。

今まで薄笑いを浮かべていたその表情が明らかに変わる。口角の下がったその口元が憎しみを露わにする。

 

「島崎、自分の事をわかってんの、あんた。あんたの為にどれだけ周りが振り回されてるか分かって言ってんの、ねえ、島崎ぱるる」

中村麻里子と島田に抱えられたぱるる。呼吸の乱れで口の動きが話そうとする言葉に追いつかない。息をするのも苦しいのか息遣いで肩が小刻みに揺れている。

 

「わたしは・・・」

 

「もういいから、また苦しくなるから。喋らないで、ぱる」

 

「ふっ。都合が悪くなったら、喘息のふり?どこまで甘ちゃんなの、あなた」

 

「あんたぁ!」

つかみかかろうとする島田晴香を横山は体で制してとめる。

その背中を菊地凛子にむけながら意外にも横山の顔には笑みがこぼれていた

横山はもうこの時点でもしかしたらこの先、菊地凛子に起こることに何かしらの予感めいた物があったのかもしれない。


それをやったら、こいつの思うつぼやろ、それに…

そう言いかけて横山は言葉を濁した。

 

「まだ出て行っていいって言ってないわよ、総監督」

 

ぱるるを抱えたまま出ていこうとする島田や横山のその背中に菊地凛子の吐き捨てるような声。



「行くよ島田」

そんな声には耳を貸さず、動かない島田に横山は声をかける

だがぱるるの足は動かなかった。

「なんなのよこいつ…」唇を噛んで吐息のような声を漏らす。

その激しくなる息遣いに横山の脈拍もふつふつと上昇を始めるのも確かだった


「このままにしといていいの?うちらのAKBをこんなやつに無茶苦茶にされてほんとにいいの?」

誰に言ってるのか分からない

その顔はうつむいたまま、うつろに床を睨んだまま、ぱるるの時は止まっていた。


「ねえ、聞こえてんの、横山。まだ話は終わってないって言ってんのよ!」

苛つくように声を荒らげる菊地凛子

そんな声を無視して横山は小さく息を吐く

「ふぅー」

目線は労るようにぱるるに落としたままだ。


うっさいなぁ。そうやっとったらあんたほんまただのおばはんやな


はぁ?誰に言ってんのあんた?


あんたやろ。こんな狭い部屋におばはん言うたらあんたしかおらへんわ、違うか?

そこでやっと顔を上げ菊地凛子を見据える横山、薄笑いを浮かべ目の座ってしまった彼女に菊地凛子は次の言葉が出てこない


横山由依という女の本性を垣間見たからなのか。それともまるで蔑むかのような横山の瞳の中に何かしらのメッセージを感じたからなのか。



「生き馬の目を抜く様なこの業界であんたはいろんなものを見てきたんやろ。

薄汚れた見たくないもんもいっぱいさ。

けど、うちらは違うで。

真っ白なもんしか見てきてない。なんでも真っすぐにしか見えへん。

 

けどそれでええんや。

うちらが歩く道はアイドルの道、真っ白な無垢な道でええんや。

間違うてたり彷徨ってたりしたらだれかが正して誰かを助ける

支え合いながらうちらはうちらだけのアイドルの道を歩いてその階段を昇ってゆく

そんな道をなんでうちらが変える必要があんのや?なぁ菊地凛子。

ぱるるや島田やこまりこがやっと見つけたそんな自分の生き方を

なんで変える必要があんのや!

答えてみぃや菊地凛子!!」

 

・・・・」

 

「よく言った」島田の声にぱるるの息遣いが平静を取り戻す。


 

「あんたのやること、なんぼのもんか、どれだけ筋の通ってるもんかは、うちらは知らん。けどあんたが生きた年数の分だけで私らにものを云うてんねんやったら、これがあんたのやり方なら、私らも私らのやり方で戦わしてもらう」

 

やれるもんなら・・・」

 やっと絞り出した菊地凛子の声に横山は被せるように言った


「ふっ、やったるで、菊地凛子」

 


 菊地凛子は意外にも、もうそれ以上はなにも言わなかった。

彼女独特の嗅覚がぱるるや横山のいつもとは違う瞳の強さに何かを感じていたのかもしれない。

主体性は認めない、優子やたかみなが作り上げた自主性を完全否定した菊地凛子。

そんな彼女の思い描くAKBは、直後に届く指原莉乃からの一通のメールであっけなく終わりを迎えた。

 

 





〜親愛なる菊地凛子様へ


 あんたとわたしは同じ線上の人間だよ、わかんない訳ないじゃん。誰にもそんなことは言わないし言うつもりもないけど、あんただけにはいっといてやる。

 

あんたがやろうとしていることはもともと見当がついてた、だって私と同じだもんあんたが考えてること。自分の事しか考えてない、周りに認められることしか考えてない、そして確かなものが欲しい。確かなもの・・お金と力だよね。

 

で今の状況、私があなたなら何をやりたいか考えた。

いくら結果を出しても上には登れない、がちがちに詰まっちゃてるんだよね、上の方は。

自分はこれだけ能力があるのになんでみとめてくれないんだろう男どもは。

そんな、あんたの嘆きいつも聞こえてきてたよ、私だけにだけどね(笑)

だとしたら、内はダメなら当然外に目を向ける。それも完全に外ではダメ。

 

あんたAKB愛はないけどAKB大好きだもんね

内のようで外、そんなもんあんの? あったんだよね、これが。

そこで行き着いたのが一つの答え。

キーワードはSNH48

どう驚いた?

 

センターのキクちゃんとナンバー2のカチューシャ、そしてタンタン。日本に来たら私のところへ泊りに来るほどみんな仲がいいのよ。何でも話す仲、オフレコの恋人のことから、デルタラインの処理の仕方まで。

知らなかったでしょ?特にキクちゃんは運営に近いのよ、あの子。たかみなもそうだったけど経営サイドのすべてを知ってる。

 

全てを見通せるあなたならもうわかってるわよね。

このわたしがつかんだネタ、文春なら一千万はくだらない。

それだけじゃない、私はAKBを救った英雄。とんでもない名声を得られることになる。

 

けど、安心しな、菊地凛子。私は今こんなこと書いてる最中もメンバーのことしか頭に浮かばないんだよ。どんな時でも泣かないさや姉、逆にいつも泣いてる私の中の由依、はるっぴの怒りの目、会うたびに顔が違うぱるる

 

馬鹿だよね、なんでこんなにいい子になったんだろうって自分でも思う。

甘いと思ったらそこでずっと笑ってな菊地凛子、そうなってしまったんだよ指原は。

 

だから、握り潰して欲しかったら、私の気が変わらないうちに今すぐその記者会見中止しな。

そして、私たちの前に二度と現れないこと

 

 菊地凛子、そうしないと、あんた・・・すべてを失うよ  

 

                          

                         〜fSashiko

 




「指原莉乃か、ふっ、やっぱり、あんたなのか・・」

 私を落とし込むのは…

その言葉を菊地凛子は辛うじて自分の胸に飲み込んだ。

訳のわからない、自分でも説明のつかない笑みが一つ漏れた。

もう笑うしか彼女のプライドを保つ術はなかったのかもしれない。

握りしめたこぶしがかすかに震えていた。


「怖いの凛子?貴女でも・・・」

そんな囁きが自分の中で聞こえたような気がした。

 

 

 

 

  

 

 𓂃𓈒𓂂𓏲☆.・𓂃𓈒𓂂𓏲☆.・

 

 

 

 

 

2016年8月6日、

埼玉スーパーアリーナ、AKB48グループ第2回大運動会当日

 

もうあと2時間もすればここは数万の人で溢れる。そして何事もなかったかのように私たちはこのグランドに立ち声援を受け走り回り、歌い踊る、AKB48として。

菊地凛子のいないAKB、どんな景色かと思ったこともあったけどそんなには変わらない。

変わったことと言えば、ぱるるが少し元気になったことぐらい。

 

あの日、「ちょっと待ってなさい」その言葉を最後に彼女はもう私たちの前には現れなかった。

彼女がいつもつけていたシャネルのサムサラのバラの香りだけを残して。

 

「凛子さん、あれからどうしたんやろ?」

 

「名古屋に帰ったって忍さんが言ってたけど」

 

留美姉から薄々は聞いていた。今のAKBとSNHの微妙な関係、そこにどうやら彼女は自分の立ち位置を見つけたかったらしい。上海の利権に彼女は絡んでいた。それもかなり深いところまでで関わっていたらしい。そしてそのことを運営側も最近になってやっと気づき始めていた。

 

「記者会見はそんな自分に注がれるようになった目を欺くため?」

 

「それだけじゃないと思う。ああ見えて、純粋にAKBの事も考えてたんじゃない?」

 

「じゃあ、なんでこんな急に消えたの?彼女」

 

「・・・・」

 

「さしこ、あんた、やばいことは、やってないねんやろな」

 

私の顔を覗くようにする、その仕草はいつものさしこ

飾らない本音を語る時にしかそんな姿を彼女はみせることはない

 

「やばいこと?・・はやってないよ。でも、指原らしいことはやったかもしれない」

 

「AKB愛・・・そう考えてええねんな、さしこ」

 

「ふふっ、しゃべり方、ぽくなってきたよね、総監督」

 

ほんの二か月前、私は彼女に卒業勧告を突き付けた。今でもそれは間違いだとは思っていない。彼女のすべてを認めるつもりはおそらくこれからもないだろう。

ただ今は私たちは同じところを向いている、そんな確かな実感があった。

 

「やっぱりあんたと私は同じ階段や」

 

「何のこと?」

 

「わたしも月に上っていきたい、そういうことや」

 

──わたしはあの月のところまで上っていきたい

研究生の頃、私に夢を語ったあの時と変わらないきらきらと輝く目が私の横にあった。

 

「で、どうなったの?あの靴屋さんとは?」

 

「聞いて、どうするんや、そんなこと?」

 

「チェリーガールも大人になったのかなぁ、って思っただけ」

 

「さしこ・・」

 

「うん?」

 

「今度言うたらグーで殴る」

 

「ふふっ」

 

 

「さしこさ~ん」

スタンドの向こう側からまっこじが叫んでいた。

 

「どうしたの~真子~」

 

「はるっぴさんがずっと睨んでて~コワい~」

 

「許してやんな~ほんとは大好きなんだよ~あんたたちの事が~」

 

菊地凛子、もしかしたら彼女は私たちにとって必要悪だったのかもしれない。なれ合いでは何も生まれない、秋元先生が彼女の様々な所業を黙認していたのはその為なのか。

そこから生まれる何かしらの力強さを私たちに先生は期待していたのかもしれない。

 

「深読みしすぎだよ」

さしこはそういった。

 

「凛子は凛子だよ。誰も彼女を止めれなかった、あそこまでになるまで。 言葉に、生き様に説得力があったんだよ、暴走していてもね。」

ある意味可愛そう、最後にぽつりと漏らしたさしこの言葉が妙に心に残った。

 

「本気でやらんと、これからは恋愛解禁も何もかも」

 

そうでないと、また第二の菊地凛子が現れる。何事も主体的にやる、それが私たちにはどこまで可能なことなのか。みんなで笑いみんなで泣く、そこに巣食う個人アイドルレースの矛盾。

 

「由依ちゃん、今回の事で私を勘違いしないでね。今でもわたしは私だから」

 

「うん」

 

「やりたいようにやる、私も博多も。」

 

「うん、わかってる」

 

さしこのその言葉は偽りではなかった。

彼女のその言葉どおり、この先の10月のじゃんけん大会で私とさしこは再び相対する事になる。

でもそのことはもう少し先のお話。

ただ、今は二人だけの時間を共有していたかった。

夢だけを抱いて夜空の星を互いに見上げたあの頃のように。







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