1年ぶりですね〜(笑)
前回のおはなしも天使の日に上げてます。
その続き、というか?後日談というか?翌日のおはなしです。
なので、前回のリンクを張っておきますね。
☆★
「ごめんなさいっ!僕・・・もう結婚してるんです!」
スーパーのお酒売り場。
俺と繋いだ手が微かに震えている。
それでもサトシは自分で断ると言って譲らなかった。
お店に毎日のように来て買い物をする常連客。
自分が断ったらお店に来なくなるかもしれない。
でも誠心誠意ごめんなさいしたら大丈夫かもしれない。
そんな風にサトシは言って、自分で謝ることを決めた。
約束の3時半前に店に行くと、お店のおねえさんたちが俺を物陰に呼びこむ。
「今日のサトシちゃん、ちょっと元気がないけど、何かあったのかい?」
俺はお店の常連客からのプロポーズの件をかいつまんで説明した。
おねえさんたちは、それで納得したという表情を見せた。
「どの客だか、見当はつく。
いつもサトシちゃんの後を追いかけ回してた客がいるんだよ。
毎日のように来てて、毎日のように同じような質問をしてたっぽい。
サトシちゃんは優しいから、丁寧に案内してたけど・・・
あれはストーカーだね」
うんうん、と頷いて。
「お店の中でのことは、あたしたちに任せておきな。
サトシちゃんに指一本触れさせやしないよ」
と、心強い言葉をもらった。
おねえさんたちが俺たちの味方になってくれていて・・・
ほんとに心強い。
世間のことを知らない、真っ白なままでサトシが働いていけるのは。
おねえさんたちのおかげだと思っている。
約束の3時半にサトシに声をかけた。
キュッと口唇を噛みしめて、緊張した顔をしている。
ちょっとだけバックヤードを借りた。
キュッと抱きしめると体が震えている。
「サトシ・・・怖い?
俺が断ろうか?」
「ううん。僕が自分でお返事する。
でも・・・翔くん・・付いてきてくれる?
手・・つないでてもいい?」
俺の胸の中から見上げるサトシが健気で可愛くて。
そのまま口唇を合わせた。
「好きのキスだけど・・・これはサトシに力を分けるためのキスだよ」
ほんのり頬を赤らめたサトシが、ほんわか微笑んで。
「ね・・・もう一回。力ちょうだい?」
おかわりを要求した。
何度でも。
「ごめんなさいっ!僕・・・もう結婚してるんです!」
震えながらも、サトシはしっかりした声で相手に言って。
2人で頭を下げた。
気が付くと、相手は消えていた。
ストーカーになりそうだ、とおねえさんたちに懸念があり。
対策としてサトシの勤務時間を変えることにした。
帰り道、一人になることがないように。
俺が仕事終わりに迎えに来られる時間まで勤務時間を延ばしてもらうことに。
その分、始まりの時間を後にずらすことにした。
「僕、ちゃんとお断りできたよね?」
「ちゃんとできてたよ。頑張ったね」
不安そうに俺の胸から俺を見上げたサトシ。
「僕・・・翔くんとずっと一緒にいられるよね?」
「もちろん。ずっと一緒だよ」
昨日からの一件はサトシの心に大きい不安を残したのかもしれない。
家に着くなり、目に涙を浮かべる。
「しょ・・くん・・・ごめんなさい・・・僕・・・僕・・・」
そのまま言葉に詰まってポロポロと涙を落とす。
いつもの涙とは違って、石にはならない。
その夜は泣き疲れたのか?
ベッドに入ったかと思うと、俺にしがみついたまま。
すぐに寝息を立て始めた。
おやすみ。
額にキスを落とした。