「ね?翔くん。結婚、って・・・なあに?」
残業が続く中、珍しく早く帰れた日。
夕食を一緒に食べながらサトシが尋ねてきた。
「結婚?大好き同志が一緒にいようと誓い合うことかな」
「え・・・?」
と、言うなりサトシが急に暗い顔をした。
箸を持つ手の動きが止まって慌てたように立ち上がろうとする。
「どうしたの?なんか・・困ってる?」
「翔くん・・・・どうしよう・・・
僕・・・結婚してくださいって言われて、よく分かんなくて。
はい、ってお返事しちゃったの。
翔くんと・・・一緒にいられなくなったらどうしよう・・・」
サトシの目にブワッと涙が浮かんでくる。
見る見るうちに目から転がり落ちる。
バイトを始めるときにあいさつはしっかりと。
返事ははい、と元気よくするんだよ、と教えていたから。
教えられた通りに返事をしたんだろう。
「誰に結婚してくださいって言われたの?」
「いつもお店に来るお客さん。
今日、いつもみたいにお手伝いしてたのに。
買い物しないから・・・どうしたのかな?って思って。
何かお困りですか?って聞いてみたの。
そうしたら、言われたの。
おねえさんたちに聞いてみようと思ったんだけど。
今日は特売日でおねえさんたち忙しそうだったから・・・
ね?翔くん・・・・どうしよう・・・・」
ポロポロと涙を零しているサトシの横に寄り肩を抱いた。
サトシが俺にしがみつく。
静かに涙を零していたのが次第にしゃくりあげて泣くようになり。
サトシを膝に乗せて、大丈夫だよ、と声をかけながら背中を撫でる。
俺の背中の服をぎゅっと握りしめている。
「サトシ・・・そのお客さんは何時頃お店に来るの?」
「夕方・・・4時頃」
「じゃあ、3時半頃に俺も行くから。
俺と一緒にそのお客さんに話そうか?
サトシはもう結婚してる、って。
俺とずっと一緒にいる約束してます、って」
背中を撫でながらゆっくりとサトシの耳に入るように話す。
「え・・・・?僕・・・翔くんと結婚してるの?」
「ずっと一緒にいる約束したでしょ?
結婚は一人の人としかできないから。
その人には謝ろうね」
「うん・・・ありがと・・・・」
サトシがズズズと鼻をすすった。
「んふふ・・安心したらお腹すいちゃった」
そういうもののサトシは俺の膝の上からは下りず。
夕食が終わっても。
風呂に入るときも。
寝るまでも寝てからも。
俺から離れようとはしなかった。
俺の存在を確かめるように探る手が・・・
あまりにも可愛らしく俺を誘って。
疲れ果てて眠るサトシの浮かべる涙はコロンとシーツに零れ落ちた。
☆
天使の日で3104の日らしいのでね(笑)
何気なく書いちゃったけど、読めない人もいたかな〜
タイトルはやっつけで付けたので、後で変えるかも。