2月22日(木)に国立ノートランクスで開催された、国立(くにたち)昭和大衆音楽同好会vol.5の報告です。
今回のテーマは「チャーリー・パーカー VS ルイ・ジョーダン」でした。
まずは琵琶奏者/音楽ライターの後藤幸浩のチャーリー・パーカー選曲・コメント編です!
■後藤幸浩 (琵琶後藤) の選曲・コメント~チャーリー・パーカー編
①Swimgmatisim ジェイ・マクシャン・オーケストラ (1941)
②Tyny's Tempo タイニー・グライムズg.vo、クライド・ハートp他
③Romance Without Finance 同 (1944.9.15)
④Dizzy's Boogie ディジー・ガレスピーtp、ジャック・マクヴィアts、ドド・ママローザ p、スリム・ゲイラードp.g 、バン・ブラウン b、ズティ・シングルトンds
⑤Flat Foot Floogie 同 (1945.12.29)
⑥Groovin High ガレスピーtp、ハートp、レモ・パルミェーリg、スラム・ステュアート b、コージー・コールds
(1945.2.28)
ここまでは、チャーリー・パーカーの、ビ・バップに至る前史的録音。①は出身地、カンザスのジャンプ~スウィング系楽団での演奏。以下はジャイヴ~ジャンプ系テイストを持ったミュージシャンとの共演。20年代から活動するズティ・シングルトン参加のセッションもあり、大げさに言うと、これまでのジャズ演奏史をキッチリ押さえてのビ・バップ誕生だったのが想像でき面白い。
と同時に、パーカーのとくに、リズムへの対処、グルーヴ感が他のメンバーと比べ (ディジー・ガレスピーは置いておいて)、明らかに別次元、斬新であることも伝わる。さらにそうであっても、パーカーの音色は、ここまでのジャズが培ってきたそれの延長線上にあり、斬新さと連続性、を同時に感じさせるという興味深いセッションだ。
キャブ・キャロウェイ、ラッキー・ミリンダなどジャイヴ~ジャンプ系エンタテインメント楽団を渡り歩いてきたディジーの参加はやはり重要で、曲作り、バップの過激さを伝えるアプローチの巧みさはパーカー以上。他、スラム・ステュアートの、アルコとハミングのユニゾンや、スリム・ゲイラードの音楽芸人テイストはいつ聞いてもツボにはまりまくり (笑) 。③は歌物で、バックで歌のカウンター・メロディを吹くパーカーがじつに良いし、こういう主旋律にカウンター・メロディをからませるアプローチは、20年代のジャズでも (たとえばシドニー・ベシェなど) さかんに行われていた。
後藤君がかけた、ライオネル・ハンプトンの小編成セッションもの「オン・ザ・サニ・サイド・オブ・ザ・ストリート」は、ジョニ・ホッジズのアルトがパーカーへの流れを感じさせたり、歌が入る寸前、テンポが倍になりかけるあたり、じつに面白く、こうした小編成セッションの中で、さまざな新しい演奏アイデアが生まれビ・バップへつながったことを想像させる。ここ①~⑥のセッションも、こうした小編成セッションの流れの中に置くことができそう。
ちなみに、ここまでの録音は昨年、日本コロンビアからリリースされたSAVOYセレクションより。UHQ-CDにより相当音が生々しく伝わるのでぜひお試しを。
⑦Sait Peanuts ガレスピーtp、アル・ヘイグp 、カーリー・ラッセルb 、シド・カトレットds (1945.5.11)
⑧Ko Ko ガレスピーtp、マイルズ・デイヴィスtp、サディク・ハキムp 、ラッセルb 、マックス・ローチds (1945.11.26)
⑨Donna Lee マイルズtp、バド・パウエル p、トミー・ポッター b、マックス・ローチds
⑩Chasin' the Bird 同 (1947.5.8)
⑪On a Slow Boat to China ケニー・ドーハムtp、へイグ p、ポッターb 、ジョー・ハリスds (1949.1.1)
ビ・バップが完成をみてからのセッションの中から。さんざん聞かれてきている演奏なので、説明はあまりいらないだろう。⑦はビッグ・バンド・ジャンプのテイストを小編成でやっている趣もある、じつにディジーらしい曲。⑩はテーマがユニゾンではなく、対位法的になっているのが面白い。ニュー・オーリンズ系ジャズのテーマ処理もこの方法が多かったことを連想させる。あと、後の "クール・ジャズ" 的なものとか。今回はかけなかったが、マイルズ・デイヴィスが『ラウンド・アバウト・ミドナイト』で取り上げた “Ah-Leu-Cha" もこのパターン。
⑪は、アフロ・アメリカン、ラティーノの音楽の応援団長的存在だったDJ、シンフォニー・シドのラジオ番組から。“Jumpin' with Symphony Sid" という曲や、ルイ・ジョーダンにも “After School Session (Swinging with Symphony Sid) ” とういう曲があるくらい慕われていた。シド引退の際、サルサのファニア・レコードは記念アルバムを制作したほど。
⑫Okiedoke マチート&ヒズ・アフロ・キューバン・オーケストラ (1949.1)
⑬In the Still of the Night デイヴ・ランバート、ギル・エヴァンズ編曲 (1953.5.25)
パーカーの多彩さ、というか、いろんな企画ものの中から。
⑫、アフロ・キューバン・ジャズへの取り組みは突拍子も無いことではなく、バップ以前からも、たとえば「南京豆売り」をはじめとしたルンバなどへの接近はあった。ここでは時代的に旬なマンボと相対している。ラテン大好きな自分としては文句なし。リズム良し・アレンジ良し・ソロ良し。腰を動かされつつ、脳味噌も刺激される。
ウィズ・ストリングズはパーカーの企画ものとしてはとくに有名だが、今回はギル・エヴァンズの楽器アレンジ、デイヴ・ランバートのコーラス・アレンジによる曲⑬を。個人的にジャズ・コーラスが好きなのでこれにした。
イントロの静謐な雰囲気にギルらしさが。コーラスのバックでカウンター・メロディを吹くパーカーは③同様、20年代以来の手法をきちんと踏襲しているし、彼独特の歌に対するセンス…まあ、歌心というやつです…を感じさせじつに良い。ソロは好んで使うフレイズから入るが、伸び伸びしていて、ぼくは良いと思いますよ (笑)。音色の幅も広くとっているし。ジャズ・コーラスとのジョイントということでは、ローランド・カーク『天才ローランド・カークの復活 ( The Return of the 5000 lb. Man ") 』(75年) の中の数曲も思い出す。
⑭Yardbird Suit マイルズtp、ラッキー・トンプスンts、アーヴ・ギャリスン g、ドド・ママローザ p、ヴィック・マクミリアン b、ロイ・ポーターds (1946.3.28)
⑮Embraceable You マイルズtp、デューク・ジョーダン p、ポッターb 、ローチds (1947.10.28)
ジャズを聞き出した頃、アナログの『バード・シンボルズ』はほんとうに良く聞いた。エコーが全体にかけられていて、本来の音ではないものの、そのエコー効果で耳に入りやすくはなっていたのだろう。⑮は何回聞いたかわからないほど好きな演奏だ。パーカーのバラードの良さが最大限発揮されている。マイルズのソロのバックでのカウンター・メロディは③⑫同様、じつに秀逸。ここだけでも泣ける。
歌心、ブルーズ・フィーリング、キュートでもありメロウでもありタフでもある多彩な音色、ビ・バップならではのアクロバティックなフレイジング、グルーヴ感…これだけのたいへんな要素の共存がチャーリー・パーカーの演奏、なのだろう、と控え目に思う次第。
