「エリック・クラプトン 12小節の人生」を観た。 | 国立(くにたち)昭和大衆音楽同好会

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  先日「エリック・クラプトン12小節の人生」をアップリンク渋谷で観た。2017年のイギリスのドキュメンタリー映画。

  1960年代イギリスのヤードバーズ〜ジョン・メイオール&ブルース・ブレイカーズ〜クリームという輝かしいキャリアを一気に上り詰めていく白人ブルース・ギタリストの精鋭クラプトンを描く序盤。ビートルズやストーンズやジミヘンなどの同時代ミュージシャンとの交流も華やか。そしてフィルモア・ウェストのクリームなどの音源もかなり勢いがあって盛り上がる。
  
  だが映画としては、音楽性というより人間エリック・クラプトンの生き様に深く迫る中盤以降の内容に予想以上に引きこまれた。
  
  「誰も信用しない」と決意するまで至った不幸な幼少期、人妻(ジョージ・ハリスン妻)への想いを切々と綴る手紙、ドラッグをやって完全にラリっている姿、ステージで泥酔してお客を罵っている様子などなど、痛いシーンが随所に出てくる。悲劇的な身内の死のことも後半では出てくる。クラプトンってアル中でヤク中でこんなどうしようもないやつだったんだと再認識すると同時に、彼を英雄視しないその有りのままの描き方によって、特に彼のファンでない自分でもなにか人間クラプトンに感情移入することができた。

  苦境から這い上がり生まれた、70年の「レイラ」と92年「ティアーズ・イン・ヘヴン」のエピソードが、この映画の山場かなと思う。特に「レイラ」ではデュアン・オールマンも登場し音楽的にもめちゃめちゃスリリング。

  音楽系ドキュメンタリーだがブルースについてやクラプトンのギター奏法についての解説はほとんどない。でも、エリック・クラプトンというブルースマンの壊れかけるところまで行った人生と闇を十分に知り感じることができたのでとても満足できる内容だった。(現在のクラプトンは家族に囲まれ幸せで、音楽を通じての社会貢献なども行なうすっかりまともな人生を過ごしている)

  今さらだがクラプトンもっと聴いてみようと思った。予想していた以上に良い映画。おすすめです。(後藤敏章)