以前にも書いたことだが、日本人はどうもSportの意味を取り違えている。
それはクルマにも言える。
日本では運動性能が頭抜けていいクルマをSportと形容し、
それよりも劣るがソコソコ運動性のいいものをSportyと言ったりする。
でも、これは両方とも間違っている。
そもそもSportとは「暇つぶし」という意味である。
貴族がヒマでヒマでしょうがないんで、鹿狩りに出かけたり、
競馬を観戦したり、チェスに興ずる。
そんな延長に、自動車が発明された頃、これは面白いということで
走るためだけに運転を始めたという経緯がある。
その頃、自動車の性能はよちよち歩きの赤ん坊のようなものだったから、
A地点からB地点へ誰が早く着くか、なんてことで「暇つぶし」にレースが始まった。
だから、コンセプトは「暇つぶし」なのである。
その証拠に、英国の新聞ではチェスや競馬観戦はSport欄に掲載されている。
また、英国のSport Carの中に果たして運動性能が頭抜けていいクルマがどれだけあっただろうか。
MGだことスピットファイヤーだことのジャギュアーだことの、どんだけ速いか?
これらのクルマは貴族やジェントリー階級が「暇つぶし」にガレージで機械いじりを
楽しむためのクルマではないか。ポルシェのような鉄壁な運動性能など持ち合わせていない。
で、写真の70年代~80年代のメルセデスSLである。
このクルマ、運動性能などまるで良くない。だから、巷ではSportyな雰囲気グルマなどと
形容されている。しかし、その発想は違う。こんなデカいクルマで2人しか乗れなくて
荷物もほとんど積めない。V8などのデカいエンジンを積んでドドドッと走る。
無駄、非合理的、野暮。それこそが、Sportの真骨頂なのである。つまり、「暇つぶし」なのだ。
ポルシェだって何がSportかというと、あの値段で2人しか乗れなくて荷物も積めない
無駄なクルマである点が、実に「暇つぶし」なのである。
初期の901モデルは、エンジンのスワップやチューニングを前提につくられている。
つまり、ガレージワークという「暇つぶし」を楽しむためのクルマだったのだ。
あんなクルマよく乗るよな、と言われる酔狂なクルマこそSport Carなのである。
だから、「速い」というだけを示しているわけではない。
SUVの「S」=Sportは、キャンプへ行ったり、海へ出かけたりといった「暇つぶし」を
意味しているからそう呼ぶ。サーキットで頭抜けたラップタイムを出せるSUVというのは何か変だ。
ちなみに、4人乗りのポルシェ「パナメーラ」を私はSport Carとは呼びたくない。
どこにも「暇つぶし」の要素がない。BMWのよくできた実用セダンと一緒だ。







