リー・アイアコッカ人生渾身のヒット、「マスタング」の
アイアコッカ・バージョンが限定で発売された。
マスタングの生みの親とされているアイアコッカだが、
マスタングの開発プロジェクトをリードした以降、
フォードにおける仕事で成功を収めた例は少ない。
演歌歌手の「ヒット一発で、一生食える」ではないが、この人、
フォードを追われて以降ずっとマスタングの財産で食いつないできたような気もする。
その唯一の業績はといえば、功罪併せ持っている。
功の部分は、アメ車における歴史的なモデル、「マスタング」を市場に投入したこと。
一方、罪の部分はスタイルやCMなどの見せかけの演出や
売り方(フルチョイス・システム)さえ上手ければ、
クルマの性能やメカニズム自体は凡庸(大衆車のファルコンの流用)でも成功する、
という悪弊を米国の自動車会社にもたらしたことだ。
後年、キャロル・シェルビーらに依頼してパフォーマンス・モデルを販売したが、
それはごく限られたユーザー向け(マニュアル・シフト)であり、
これとても凡庸なクルマを魅力的に見せる演出のひとつだった。
さて、アイアコッカ・バージョンの「マスタング」に話を振る。
このクルマ、けっこう魅力的だ。
スペックやスタイリングなどクルマ自体の完成度の高さはもちろんだが、
何よりも魅力的なのは、アイアコッカ本人をクルマの演出に使っていることだ。
かつてはプロジェクトのリーダーを務めた米自動車業界のヒーローを、
客寄せパンダになることを承知の上で口説いた開発責任者に拍手を送りたい。
ところで、マスタングの本当の功労者は、64年の初代モデルをデザインした
デビッド・アッシュだと私は信じて疑わない。







