昭和の歌謡曲の多くは、
まるで短編小説を読んでいるかのような
詩が多い。ストーリーが詩の行間から
ありありと浮かんでくる。
たとえば、ちあきなおみの「喝采」。
歌手という職業選択の悲哀を歌ったこの詩は、
高度成長期が陰り始めた時代、
会社人間を憂うサラリーマンの人生をも
投影していた。
ザ・ピーナッツの「恋のフーガ」も好きな歌だ。
67年の歌だが、この年に公開された「卒業」の
アンサーソングのようでおもしろい。
結ばれない運命の恋の悲哀を歌っているのだが、
ウェット感がまるでない。
恋に恋している女性の歌のようにも聴こえる。
それが映画「卒業」のママゴト恋愛を想起させる。
最後のスキャット部分などは、失恋したのに
あっけらかんとしながら強い調子でエンディングを迎える。
雨、水、涙というワードが登場するのに、
ぜんぜんウェット感がない詩の裏に、
何か天才なかにし礼の企みがあるのだろうか。
