今年のテーマは「Restoration」。
行き詰まった時代には、過去の財産が役立つ。
また、ダメになったものを「回復」させることがこれからの時代の急務だと思う。
何でもかんでも捨てて、新しいものを作る「スクラップ&ビルド」型の日本。
いいものは、実はそんなに存在しない。
ところで、Tubeの画像を観るとビツクリする。
廃車のマスタング65年ノッチバック・モデルが新車のように甦る。
これ、アメリカでは珍しくない光景。
レストレーション市場は旺盛で、パーツやビルダーなどの裾野産業も整っている。
膨大なスクラップから再生可能なパーツやフレームを見つけ出すノウハウも確立されている。
だから、安価でクラシックカーのレストレーションが楽しめる。
ファン層は広く、レストレーションをテーマにしたシリーズTV番組さえある。
日本はどうかというと、超お金持ちの道楽レベル。普通の人がレストレーションになんて
手が出せない。ひどく修復費用が高いし、裾野産業がゼロに等しいから。
で、整備関連の技術もアメリカに比べ疑問符が付く。
旧いクルマを扱う日本の多くの整備工場は、
「故障を直して走るようにする」というレベルに
終始しているけれど(優秀な技術を持つ例外もある)、
アメリカの場合は新車時の乗り味を再現したり、モダン・チューニングしたりとレベルがまるで違う。
自動車産業のことを考えると、新車が工場から次々とラインオフされて3~4年おきに
新車がガンガン売れることで雇用も創出でき、下請けを含めた周辺産業が潤う仕組みは
否定できない。けれども、かつての日本やいまの中国のように
"大量消費だけ"の構造に果たしていつまでユーザーは満足していられるのだろうか。
アーカイヴという発想のなかった国産車に、
レストレーションしてまで乗りたいと思わせる名車がどれだけあるのか。
欧州や北米のクルマには名車と呼ばれるものがたくさんあり、
その多くがすばらしいコンディションにレストレーションされて、
道行く人から羨望の眼差しで見られている。
ブランド論を声高に叫んでも、多くの人にレストレーションしたい
と思わせるクルマを持たないメーカーが果たしてブランドになれるだろうか。