夫婦ともどもアルコール中毒で、家庭が崩壊してしまうシリアスなドラマ「酒とバラの日々」。
ロマンチックなヘンリー・マンシーニのテーマ曲とは逆に、その内容は悲しくも救いがない。
最近、某芸能人の夫婦が違法ドラッグの所持・使用容疑で世間を賑わしているが、
おそらくこの事件も「酒とバラの日々」のように
夫婦関係および家庭の崩壊という結末が訪れることは間違いないだろう。
ところでこの映画で感心したのは、主演のジャック・レモンの着こなしだ。
いわゆるコモン・マン的なアメリカン・トラッドながら、その普通さが実に上品でエレガント。
何もしていないようで、ものすごくお洒落に思えて仕方がない。
袖口ボタンの間隔、スーツの風合い、ソリッドタイなど、アメリカ東部の知識階級が有する
独特の知性が服装によく現れている。彼の場合は、出演作のほとんどにおいてアメリカン・トラッドを
貫いていることからも、衣裳担当者が用意したワードローブのお仕着せではないことがわかる。
そうした趣味の良さの背景には、アメリカン・トラッドのヴィンテージ・エラ(時代)を
ハーバード大学で過ごしたことも影響しているのかもしれない。
何と言っても、オクスフォード地のボタン・ダウンシャツを着たら、ジャック・レモンの
右に出る役者はいないのではないか。彼の持つ「普通さ=オーディナリー・エレガンス」において。