「人間がサル化(ゴリラ化ではない)しているのではないか」という指摘は、的を射ていて非常に興味深い。人類として継承してきた“身心の構造”と遊離するような社会現象が生じてきているわけだ。

 

 では、人類とはどういう特徴を有するのか?この点で、脳と身体の成長のアンバランスが注目されている。つまり、同じヒト科のゴリラの赤ちゃんは1.6kgくらいの体重で生まれるという。人間は、3kg前後で生まれる。(早産で800gや通常出産でも2500g以下という保育器での養育を経る子もいる)

 

 人間の赤ちゃんの特徴は、始めは身体の成長が早いが、次第に成長速度がゆっくりとなることだ。にもかかわらず、1から2歳で母乳を吸うのを止めてしまい、乳児なのに離乳してしまうのだ。ゴリラ・オランウータン・チンパンジーなどは大臼歯が生えてから離乳するのに、人間だけは大臼歯が萌出するまえに離乳するので「離乳食」が必要になったのだという。なるほど、人間だけを観察するよりも、ヒト科の類人猿と比べるという方法によって見えてくるものもあるというのは面白い。

 

 人間の赤ちゃんの脳は、生まれて1年以内に2倍になるという。ゴリラの赤ちゃんの生まれたときの脳は人間の赤ちゃんの脳と大きさは変わらないが、4年間で2倍になってストップするのだという。では、脳の発達は人間の赤ちゃんの成長が急速なのかというと、その秘密は生まれたときの体重差にあるという。ゴリラより人間の赤ちゃんの方が重く生まれたということの差は、体を包んでいる脂肪量にあるらしいのだ。体脂肪率は、ゴリラの赤ちゃんの場合5%以下だが、人間の赤ちゃんの場合は、15~25%もあるという。その脂肪こそが脳を急速に発達させるためのエネルギーとして不可欠の存在なのだ。

人間の場合、1歳までに2倍、5歳までに成人の90%に達し、12~16歳で脳は完成するそうだ。こうしてみると、七五三とか元服の行事とかは、成長の節目として理由があったことがわかる。

 

そして、脳が完成しても、人間の成人は、摂取エネルギーの20%を脳の維持に使っているというから、脳は摂取した栄養をどんどん消費する器官なのだ。

5歳以下の子どもでは、実に摂取エネルギーの40~85%を脳の成長に回しているのだという。

 

 だから、脳の成長が活発な年齢の時期は身体の成長はゆっくりであり、脳の成長が90%位まで達成すると、今度は身体の成長にエネルギーを使えるようになって、身体の成長がアップするようになるということらしい。脳の成長に身体が追いつく時期で、「思春期スパート」と呼ぶそうだ。女子のほうが2年くらい早くその時期がやってくるという。確かに経験的に考えても、女子は中学二年生くらい、男子は高一前後が扱いにくい年齢だということは経験的にも分かる。

「思春期スパート」というのは、身体と脳のバランスが大きく崩れる時期なのだ。

その年齢期には、「冒険心」「野心」によってトラブルを起こしたり巻き込まれたりという事件が起こったり、精神的に傷ついて「自傷」「自殺」という事態も生じたりするのは、よく知られていることだ。

 

 こうしてみると、「思春期スパート」の少年少女には、おとな達の見守る姿勢や支える行動ということが必要なのだということが裏付けられた気がする。

 

 現代は子どもたちに少年少女たちに、「小さい大人」であることを要求してしまっているのではないか、それは「市場競争」万能と「管理社会」万能の発想に起因しているのではないかと思えてきた。

 

 こどもの貧困の広がりという背景の中で心あるおとな達の中に「こども食堂」の開設が全国に広がってきた。それは子どもがこどもとして養育されていない現実からだと思う。その場に孤食の老人たちも集ってくるという。

このあたりの問題を「サル化してきた人間社会」という観点から、次回のブログでもう少し掘り下げてみたいと思う。