ある日、伸一が
「お父さん、練習に行こうよ」
と、私を誘いました。
伸一はこのところ前のほうの右サイドのポジションで試合をしています。
サイドでいいボールをもらい、センタリングをあげようとするけれど、上手くあげれなかったから練習をしたい、とのことでした。
私たちはボールを持って近くの会社の駐車場に行きました。休みの日なので、車は一台も止まっていません。
私は中央から右にインサイドキックでボールを蹴って走ります。
伸一はそのボールめがけて走り、直接ゴール方向へセンタリングをあげる練習をしました。
最初はあらぬ方向へ蹴っていたりした伸一ですが、何度か繰り返すうちに上手くボールをあげれるようになって来ました。
「うまいぞ、伸一!」
私は一生懸命おだててやります。
次は来たボールを一度トラップしてからあげるようにしてみます。
私はわざと早いボールを蹴ったり、少しバウンドするようなボールを蹴ってみます。
そのボールをツータッチでセンタリングする練習です。
これが伸一はへたです。
余裕があってボールをトラップするときはいいのですが、基本的に伸一は走りながらボールをコントロールするのがすごくへたですから、ワンタッチ目でうまくボールの勢いを殺せなかったり、あらぬ方向へ行ってしまったりで、無理な体制でセンタリングを上げようとしてミス、の繰り返しでした。
しかしこれも、私がくたびれて動けなくなる頃には、伸一はなんとなくコツを掴んでボールをあげれるようになりました。
そして次の週の日曜日。
伸一はサッカーの試合に出ました。
ポジションは・・・・ 前の週に練習したのとは逆の左サイド。
やっぱり伸一はへたで、うまくセンタリングをあげれませんでした。
というより、そっちのサイドからは、何にも練習しなかったじゃないか!!!