
<5月4日>
国際芸術センター青森。
青森市郊外の丘陵地にあって、周囲は鬱蒼とした森に囲まれた中に建っています。
中央に円形の水盤、それを抱きかかえるように展示室やラウンジが、弧を描くように配置されています。水盤の
真ん中を直線に通路が走り、片方は開放空間 ( 画像右側 )、片方は野外劇場 ( 同左側 ) のような構造。

「 野外劇場 」 の最上段に上がって、ラウンジ、オーブンデッキ、開放空間を眺めます。
誰もいない、小鳥の囀りと、わずかな雨の音、木々のざわめきしか聞こえない・・・野外でもあり屋内でもある
ような混沌とした静謐な空間が拡がっていました。

展示室の窓は外光を取り入れるようになっているので、逆に、外から中を見ることができます。
さっき見学したばかりの 「 中西信洋展 」。これじゃぁ、何のことやら分かりませんね。
R型の展示室にある作品を、この画像で言えば、斜め左上にある窓から見ると、一つ上の画像になります。
雲の動く風景を、30秒おきに定点撮影した風景 ( Cloud ) と、霧の立ち込める森の中を数歩ずつ歩きながら
連続撮影した風景 ( Forest ) が、寄り添うように何百枚もぶら下がっています。
平面と立体、過去と現在、消えゆくものと現れて来るものといった、一瞬タイムトンネルのような体験ができ
ます。

帰りは、アプローチの中を通らず、外から眺めながら駐車場へ戻りました。
5月4日。ゴールデンウィークの真っただ中というのに、こんなに残雪がありました。今冬の豪雪の名残りです。

JR東日本の会員制倶楽部 「 大人の休日倶楽部 」 で毎月機関誌を発行しています。
その雑誌に連載されている 「 美術館のポリフォニー 」 という特集があり、4月号の特集がここ 「 国際芸術
センター青森 」 でした。
特集名の由来は・・・
【 ただひとつの声部しか存在しないモノフォニーではなく、主旋律と伴奏和音から成るホモフォニー
でもない。美術館においてはその建築と館内の事物とは、音楽に譬えれば多様な声部が響き合う
ポリフォニーを奏でている。】・・・から。
しっとりと、慌てず騒がず、心静かに、というコンセプトに貫かれた特集で、毎回全国の選りすぐりの美術館が
紹介されるので、楽しく読ませていただいています。
帰り際に振り返ったアプローチ。特集での紹介文はこんな風です。
【 木立ちの中を抜ける、青森のヒバ材を敷いた長いアプローチ。湾曲した白木を、まるで経糸
( たていと ) と緯糸 ( よこいと ) のように組み上げて造られた天井がかぶせられ、光と風が通り
抜けるトンネルとなったそこは、季節や時刻を訪れた者に静かに告知する。この美術館は、そこに
至る道から、すでに美しく劇的だ。】

帰り際に、津軽PAで小休憩。
今年のゴールデンウィークは、十和田市の桜まつりの最終盤、現代美術館とアート広場を堪能し、残雪深い
八甲田連峰を抜けて、青森市郊外、静寂に包まれながらも凛とした存在感を持つ国際芸術センター青森と、
ドライブコースそのものが 「 ポリフォニー 」 でした。 【FIN】