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 『 南アフリカらしい時間 』 植田智加子著、海鳴社。
 
 タイトルや表紙から、どことなくゆったりしているような・・・、さりげなく見つめているような・・・、それでいて
 
逞しく生き抜いているような・・・雰囲気が伝わって来ます。
 
 シングルマザーとなった、ひとりの日本人女性が、南アフリカの町の片隅で、この町で生きる人たちとの交流
 
の様子を綴った本です。
 
 著者は鍼灸師。ネルソン・マンデラ氏の来日をきっかけに、彼の治療をするようになり、ついにはケープタウン
 
に鍼灸院を開きます。第Ⅱ部 「 マンデラの家 」 は、治療のために通ったマンデラ氏の自宅でのエピソードや
 
彼女の感じたことを淡々と語っています。そんな一節の中に・・・、
 
 アパルトヘイトに対して果敢に闘争を挑んだANC ( The African National Congress=アフリカ民族会議 )の
 
メンバーで、強烈な個性を持つ3人の話。マンデラ、シスル、タンボの3人に対する、植田さんの評価。
 
 この3人はいずれも、「 人を平等に扱うことのできる天性の能力を持っていた 」 という表現をしています。
 
アパルトヘイト真っただ中の南アフリカにおいても一貫して、白人を優先することもないし、黒人や自分と同じ
 
民族 ( コサ族 ) を優先することもない。肌の色、人種、国籍、男女にかかわらず、どんな人に対しても平等に
 
接していた・・・という資質を高く評価しています。
 
 「 平等に 」 というのは、頭では分かりますが、実際にとなればなかなか難しいですね。先輩後輩とか、肩書
 
とか、職業とか・・・、とくに人種や宗教となれば更に難しいような気がします。
 
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 ワールドカップが開催され、世界中に情報が流れた南アフリカという国ですが、この本を読むと、この国の持つ
 
歴史の重みが日常生活の話からヒシヒシと伝わって来ます。ただ、登場して来る人たちは、そんな 「 重さ 」 を
 
全く感じさせず ( とくにマンデラ氏 ) 、ある意味淡々と、ある意味飄々と生きていることに驚きを覚えます。
 
 「 人として当たり前のことを、当たり前に生きる 」 そんな空気が全編に漂っていて、何となく懐の深さとか、
 
本当の優しさとか、ドキッ!とさせられつつ、ホンワカ!させられるような・・・独特のタッチで描かれています。
 
 考えさせられますが、ハッピーになれます。
 
 【 2010年11月20日 読了 】