金沢21世紀美術館 「 まるびぃ 」 の無料ゾーンの一角。情報ラウンジと市民ギャラリーの間に、どこが入口
なのか一瞬分からない部屋があります。

中に入れば、コンクリート製のただの 「 四角い部屋 」。
ただし、天井がありません。天井のように見えたのは、「 四角く切り取られた空 」 です。
米ロサンジェルス生まれのジェームズ・タレル作 『 ブルー・プラネット・スカイ 』。

雨だったこの日、部屋の中は水浸しになっていました。
しーーーんと静まり返った、がらんどうの部屋に、雨の音だけが響きます。部屋の四方の隅は、座れるように
ベンチ状になっていて、“ どこでも、ご自由に、何時間でも座っていてください ・・・” とでも言いたげ。
光とその知覚をテーマにした空間作品で、空が作品の一部になっています。朝、昼、夕方、夜の光の移ろい、
春夏秋冬の光や風や雲の変化が、ただここに座っているだけで感じられる・・・という仕掛けです。

南側の光庭にある、こんもりとした緑の塊も展示物です。
屋根の上には 「 雲を測る男 」 が見えます。右側の緑は、パリ生まれのパトリック・ブラン作 『 緑の橋 』。
厚さ14cmの壁に、金沢の気候に適した植物が植えられています。その数、約100種類。生きて行くために
最低限必要なものさえあれば、たとえ環境が変わっても植物は必ず順応していく・・・というテーマの作品です。
外に向かって開かれた美術館であるため、季節の変化も楽しむことができる構造になっています。内向きの
閉じられた空間で、外界とは遮断される従来の美術館にはない面白さと、不思議なほどの安堵感があります。